兄弟の話 ページ25
目が覚めた朱雀は己の身に起きたことに戸惑いを隠せなかった。
刀身が短くなっていた。
己が持つ力はそのままに見てくれが大きく変わっていた。
己の名の下に新しく彫り込まれた"国永"の文字。
そして何より朱雀が戸惑ったのは己の横に眠る真っ白な刀。
紅白が揃ったなんて呑気なことを考えている場合ではなかった。
なぜ生き残った。
なぜ朽ちなかった。
そんなことはこの場の状況を見て理解ができる。
ここは鍛冶場だ。
つまりボロボロになった刀身は刷りあげられ打ち直され…
再刃されたのだ。
余計なことを、と舌打ちしたくなるのをグッとこらえ己の中に変わらずにいる鬼に少し安堵した。
『う、ん…
おっ、目が覚めたか兄弟！』
突然目を覚ました白い刀が発した一言に朱雀いぶかしげな顔を向ける。
『兄弟？』
問う朱雀に白い刀は嬉しそうに頷き朱雀の刀身を指差した。
どうやらこの刀は"国永"の名のことを言っているらしい。
自分と同じ名前を彫られたお前は俺の兄弟だろう、と
答えない朱雀の態度を肯定ととったのか白い刀は楽しそうに笑う。
『俺は鶴丸国永！
よろしくな紅鶴！』
『…朱雀だ』
面倒くさそうに答えた朱雀に鶴丸はキョトンとした顔を向ける。
『お前は俺の妹だろう？
刻まれた名前ではなく白い俺が鶴ならお前は紅鶴だろう？』
鶴丸の発言に朱雀は呆れたようにため息をこぼす。
『そなたよかよっぽど年上だ。
それに我はここの主に産み出されたわけではないゆえそなたの兄弟でもない。
我の兄弟は天叢雲剣と草薙剣のみだ。』
突き放すようにいう朱雀に鶴丸は目をキラキラと輝かせる。
『それは凄いな！
さすがは俺の妹だ！
な、紅鶴っ！』
『…話を聞いてくれぬか？』
全く話を聞かない鶴丸は相変わらず楽しげな笑顔を朱雀に向けてくる。
誰かを守ることも誰かを殺すこともだれかの誇りになることも経験したことのない鶴丸の態度に朱雀は無償にイライラした。
その段階で朱雀の鶴丸に対する認識は"面倒で喧しい厄介者"と決まってしまった。
そうと決まればそれ以上は鶴丸がどれだけ話しかけようと朱雀はすべて反応することなく聞き流していった。
そうして鶴丸の一方通行な思いだけを残して彼らは別々の主の手に渡っていった。
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吹雪(プロフ) - コメント感謝しますm(__)m返信、更新ともに遅れて申し訳ないです。これからもよろしくお願いします！ (2018年10月15日 10時) (
レス) id: 4e2a82a17c (このIDを非表示/違反報告)
泉 - とても面白いです！更新楽しみにしています(^O^) (2018年10月8日 15時) (レス) id: 43f343ee39 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：吹雪 燐 | 作成日時：2018年10月2日 20時
