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青龍晴明は晴明の思いと力が込められ、生まれたいわゆる妖刀に区分される刀だ。

己の主を信じることでその力は最大限発揮されるがとるに足らないものであれば一切力を貸さない。

いわば信頼を形にした妖刀だ。

だがそこまでに力をもってしてなおこの刀は世に名を残すことはなかった。

ある鬼退治の折、刀は迷った。

愛しき主である博雅を守るためには彼の愛する女性を殺さなければならない。

だが博雅は自分の命と引き換えても彼女を救いたかった。

しかし女もまた博雅のために命を惜しまなかった。

女のその思いは青龍と同じだった。

青龍は問うた


『俺はお前を殺すだろう。

だがお前を成仏させるためにこの器をお前に差し出そう。

お前はそれでよいか。』


満足そうに微笑んだ女、月姫の喉を刀は容赦なく切り裂いた。

悲しみと苦しさの中で泣き叫ぶ博雅を晴明と彼を守る刀は見た。

こんな苦しい刀は今後世に存在してはならぬ、と。

赤く染まった青い刀身は青龍の名を捨て朱雀となった。

彼を守りたいと願う男と女の魂がその刀をより強くさせた。



月日は経ち博雅は随分と老いた。

彼は自信を守ってきた刀剣を都を一望できる山の上へと誘った。

そこには真新しい小さな社がたたずんでいた。


「お前と共に墓に入ることもよいとも思ったがお前にはここで見ていてもらいたいのだ。

そしてどうかこの老いぼれの最後の願いを聞いてほしい。

俺の愛した、俺の生きたこの都を守ってくれぬか。」


彼が己にした最初で最後の願いを刀は受け入れた。

博雅が刀をこの社に置いていった次の日、彼は友人である大天狗にてを引かれ黄泉路へと旅立っていった。

それを見送った朱雀は社から都を見守った。

これからは主の愛したこの都のために己の力を使うと心に誓って…


しかしそれはうまくはいかなかった。

ある日の晩、この場を通りかかった盗賊に刀は盗まれた。

その日を境に都は暗雲に包まれ疫病が蔓延した。

己を盗んだ男の手の中から見た光景に朱雀は絶望した。

都が燃えていた。

愛した人の守りたかったものが、愛した人に託されたものが無情にも赤く染まっている。

恨みと悲しみで盗賊たちを呪い殺した朱雀は誰も通らないような山奥に捨て置かれた。

日に日にボロボロになっていく身体に朱雀は自嘲気味に笑うと目を閉じた。

すさんだ心に蓋をするように頭上から降る優しい声にすら蓋をして…

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吹雪(プロフ) - コメント感謝しますm(__)m返信、更新ともに遅れて申し訳ないです。これからもよろしくお願いします! (2018年10月15日 10時) (レス) id: 4e2a82a17c (このIDを非表示/違反報告)
- とても面白いです!更新楽しみにしています(^O^) (2018年10月8日 15時) (レス) id: 43f343ee39 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:吹雪 燐 | 作成日時:2018年10月2日 20時

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