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「辛くないの？」
それまで黙っていた灰原がポツリとこぼした。
「辛い、ですか？」
その言葉を拾った五虎退は不思議そうに首をかしげる。
刀でなくとも物として生まれた者は皆そうだ。
何かのために産み出され、人の手に渡り、壊れるまで使われることが喜びで……
刀として生まれてきた自分達は兄弟で敵対することもある。
物だからなにも言えないしそれぞれの信念があるから例え兄弟をこの手で折っても折られたとしても罪悪感も悲しみもなかった。
源氏の二人もそうであったし、朱雀と鶴丸もかつては敵対同士の刀として戦場に立っていたこともある。
五虎退も言わずもがなそうであった。
それが当たり前だった。
当たり前で、信念と誇りを持っていたからこそこうして時代を越えもう一度巡りあった今“兄弟”と認めあい“家族”として受け入れるのだ。
だから五虎退にはわからなかった。
審神者の手によって不幸になった本丸に残してきた兄弟達がいることは確かに辛いが離ればなれでいることが辛いなどとは思ったことがなかったからだ。
人の姿を知らなかった
自分で動けることを知らなかった
声を出し語ることを知らなかった
兄弟で、仲間で笑い会うことを知らなかった……
出会えた喜びも大好きな兄弟だとも大声で語ることができる。
出会えても出会えなくてもそれが運命で、それが当然で、寂しいなんてそんな“欲”は神である彼らには、物である彼らには当然のことながらわからないのだ。
「……そう、よくわかったわ。」
灰原は五虎退の反応を見て言った。
「えっと、すみません……」
気まずくて謝る五虎退に灰原は首を横に振る。
「いいのよ。
私もあなたみたいに強くなりたいわ。」
「……」
灰原の言葉に五虎退は困ったように笑った。
「あれ？
皆こんなとこでどうしたの？」
声のした方に目を向けると少し驚いた様子の加州が立っていた。
五虎退はハッとして辺りを見回した。
ここにはよく出陣できていた。
夜でもなければ町並みも変わりすぎていて気がつかなかったがここはまさに
「池田屋……」
こぼされた言葉に加州は寂しそうな悲しそうな笑顔を向ける。
「うん。
僕はここでけじめをつけられるかなって思ったんだけどね……」
五虎退と萩原、降谷以外が首をかしげるなか加州はニコッと笑う。
「なんや大和君、ここに何かあるの？」
「まあね。」
そっと目を伏せた加州に全員が黙ってなにも言えなくなってしまった。
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吹雪(プロフ) - コメント感謝しますm(__)m返信、更新ともに遅れて申し訳ないです。これからもよろしくお願いします！ (2018年10月15日 10時) (
レス) id: 4e2a82a17c (このIDを非表示/違反報告)
泉 - とても面白いです！更新楽しみにしています(^O^) (2018年10月8日 15時) (レス) id: 43f343ee39 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：吹雪 燐 | 作成日時：2018年10月2日 20時
