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加州の様子がおかしいことに気がついた五虎退はいつもの調子に戻った彼にほっと息を吐いた。
朱雀はそんな彼らの様子を見て微笑むとそっと辺りを見回した。
平安の面影はなくなり、江戸の頃ともまた違うその町並みでも笑い会う人々の中に愛すべきかつての主が愛した世界が広がっていた。
(我が刃生はここから始まりここで終わるのだな……)
しみじみとそんなことを思うと死を前にしているはずなのに不思議と心が穏やかになる。
この地に生まれこの地で終わる、それはかつて愛した人々と同じ運命。
何度命の終わりが来ようとも己はここで果てるのだと改めて感じた。
「楓?」
降谷に呼び掛けられ朱雀はいつもの美しい笑みではなくふわりと幸せそうに笑った。
その笑顔に降谷は驚き目を見開く。
「ありがとうございます、透。」
一言そうお礼をいった朱雀はいつもの綺麗な笑顔に戻ると再び口を開いた。
「あの、私と大和、それから吉光は少し単独行動をしてもよろしくて?
ここは私たちにとって縁の深い場所ですから……」
彼女の申し出に降谷は本日2度目の驚きを覚えた。
普段自分の側を離れようとしない彼らがそんなことを言ったことはない。
だが
「わかった。
ゆっくりしてくるといい。」
降谷が笑顔で言うと朱雀たちは安心したように微笑みそれぞれの行きたい方角へ姿を消した。
「あれー?
吉光くん達は?」
歩美が声をあげると全員がそういえばと辺りを見回した。
「楓と吉光と大和はそれぞれ行きたいところがあるんだそうです。
みんなの迷惑になるからと単独行動をしたいと言って先にいってしまったんですよ。」
「「「えぇーー!!??」」」
降谷の声に子供たちは明らかに不満そうな声をあげた。
「……お墓参りに行きたいって言ってたから」
それまで黙っていた萩原が口を開くと子供達がそちらを見た。
「あの3人は京都の出だからね。
東都に出てから1度も京都に帰ってないらしくてずっと“大切な人たちのお墓参りに行きたい”っていってたよ。
流石に皆を連れていくわけにはいかなかったんじゃないかな?」
彼女の言葉に子供たちはしょんぼりと項垂れた。
そんな彼らを見た園子が大袈裟に手を叩く。
「さて!
京都の観光巡り始めるわよ!!
みんなこの園子様に着いてきなさい!」
「「「おおー!!」」」
彼女の一言でその場の空気が一気に明るくなった。
それに会わせるようにどこからか紅葉の葉がゆらりと舞い込んだ。
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吹雪(プロフ) - コメント感謝しますm(__)m返信、更新ともに遅れて申し訳ないです。これからもよろしくお願いします! (2018年10月15日 10時) (レス) id: 4e2a82a17c (このIDを非表示/違反報告)
泉 - とても面白いです!更新楽しみにしています(^O^) (2018年10月8日 15時) (レス) id: 43f343ee39 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:吹雪 燐 | 作成日時:2018年10月2日 20時