約束 ページ2
「京へは明日発つのだったな……」
その日朱雀は１人縁側で庭を眺めながらポツリと呟いた。
季節外れの桜が咲くこの本丸はこれまた季節外れの春の風が吹く。
優しく時に荒っぽいのにどこか儚いその風は降谷の心を写し出したようで思わず笑みがこぼれる。
「俺がこの本丸にいられるのも今日で最後だな。
感慨深いものよのう、そうであろう？
五虎退よ。」
朱雀の言葉に角に隠れていた五虎退はばつが悪そうに出てきて朱雀のとなりに座った。
彼の虎は朱雀と五虎退を包むように丸くなると静かに目を閉じた。
「して何か用か？」
朱雀に問われた五虎退はふわりと微笑んだ。
「これが最後なので少しお話をと思いまして。」
その答えに朱雀は１つ頷いた。
「それもそうだな。
俺もそなたに話したいことがあった。」
五虎退は笑顔を濃くすると楽しそうに口を開く。
「僕のこの“味覚”のことですか？」
「……気付いておったか。」
「僕も一応は神様ですから。」
そう答えた彼はぼうっと庭を眺める。
その横顔を黙って見つめていた朱雀は１つ息を吐くと綺麗な笑顔を浮かべた。
「やはりそなたは強いなぁ。
それにとても優しい。
自分自身で味覚を封じる呪をかけてしまうなどとはな。」
彼の言葉に庭を眺めていた五虎退はふわりとした笑顔を庭に向ける。
「あの時、燭台切様も歌仙様も大好きな料理を作ることを苦しんでいました。
鶴丸様も驚きが嫌いになり、鶯丸様も縁側でお茶を飲まなくなりました。
戦に出ることが好きだった同田貫様は皆さんの楯となるために本丸に留まり、庭で遊ぶことが大好きだった兄弟達も部屋に引きこもる毎日で……
だから僕はきっと願掛けをしたかったんです。
皆さんが好きなことをして笑顔で笑い合えるように、と。
それが毒と影響しあって味覚を封じてしまったのでしょう。
そしてこれは……」
「ああ、皆が笑い合えた後に解ける呪だろうな。」
五虎退の言葉を補った朱雀は彼の目線に合わせると彼の肩に手を置いた。
「なあ五虎退、俺と最後の約束をしてくれぬか？」
朱雀のその視線に五虎退は笑顔で答えた。
「必ず幸せになって欲しい。」
「……約束しましょう。」
答えた五虎退はコツリと朱雀の額に自分の額をくっつけ笑った。
そこに五虎退の虎の上からもう１つ頭が重なった。
「ばーか、俺を忘れるなっての。」
2人が目を開けるともう１人の相棒がニコリと笑顔を浮かべていた。
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吹雪(プロフ) - コメント感謝しますm(__)m返信、更新ともに遅れて申し訳ないです。これからもよろしくお願いします！ (2018年10月15日 10時) (
レス) id: 4e2a82a17c (このIDを非表示/違反報告)
泉 - とても面白いです！更新楽しみにしています(^O^) (2018年10月8日 15時) (レス) id: 43f343ee39 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：吹雪 燐 | 作成日時：2018年10月2日 20時
