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今よりも千年以上も昔、平安京の一画に風変わりな男はいた。

本当に人間かどうか疑うほどの容姿と優れた陰陽術、とある噂から人々に恐れられたその男は人を信じず己の力と彼の目に見える人ではないモノ"を信じた。

"狐の子"

そう呼ぶ人々の声は彼を屋敷に閉じ籠らせるには充分であった。

ほとんど屋敷からでないその男には都の安寧も発展もどうでもよく、滅びるも栄えるも興味がなかった。

そんな彼の元に自分の運命をかえる訪問者が現れる。

おっかなびっくりと彼の屋敷の門を叩いた男はそれでもまっすぐな強い瞳で彼の前に立った。

その目に強く惹かれた。

混沌が渦巻く世に男のように純粋な正義を持つ目をみたことがなかった。


「私は源博雅と申す者、安倍晴明はいるか。」

そう訪ねたその男と目があった。


それが天才的陰陽師、安倍晴明と源博雅の出会いだった。


向かいに座る博雅はまじまじと晴明の顔を見て呟いた。


「人だ…」


「そんなに狐に似ておりますかな。」


「あ、いや、これは失礼した。」


恐らく無意識にこぼされたであろう言葉を拾えば博雅は申し訳なさそうに頬を掻いた。

素直に謝る目の前の男に晴明は薄く笑った。

武骨な見た目をして思いの外彼の性格は柔らかいようだ。

晴明のそんな考えを知ってか知らずか博雅は口を開く。


「今日は頼みがあってきたのだ。」


そう切り出す彼に晴明は面白そうに口元に三日月を浮かべる。


「存じております。」


「は?」


間抜けな声をあげる博雅に晴明はさらに笑みを濃くした。

ではいきましょうか、なんて声をかけ立ち上がる。

なぜだか博雅の頼みを聞きたくなった。

きっと気まぐれだろうとたかをくくり戸惑う博雅をつれて外へ出る。


「ちょ、ちょっと待て晴明殿!

何処へ行こうと言うのだ!

俺はまだなにも話してはおらぬ!」


訴える博雅に晴明はからかうように笑った。


「都に出る鬼の事でございましょう?

聞かずともわかります。」


驚いたように目を見開いた博雅はまじまじと晴明をみる。


「お前、凄いな…」


素でこぼされた声は嘘も畏怖もなく純粋に晴明を誉め称えていた。

いつも何かしらのレッテルを張られ周りからはそれが当たり前のように言われ続けてきた晴明には彼の言葉はどこかくすぐったかった。


「…お前もな」


ボソリと呟かれた声は博雅には聞こえなかったらしく彼は不思議そうに首をかしげるのであった。

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吹雪(プロフ) - コメント感謝しますm(__)m返信、更新ともに遅れて申し訳ないです。これからもよろしくお願いします! (2018年10月15日 10時) (レス) id: 4e2a82a17c (このIDを非表示/違反報告)
- とても面白いです!更新楽しみにしています(^O^) (2018年10月8日 15時) (レス) id: 43f343ee39 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:吹雪 燐 | 作成日時:2018年10月2日 20時

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