2 ページ21
赤井はセーフティハウスに戻るとすぐにライフルの手入れを始めた。
傍らには紅い刀身の美しい日本刀が置いてある。
彼はそれに触れるとポツリと声をこぼした。
「毎日バーボンから殺意のこもった目を向けられるのだがお前は本当に帰る気がないのか？
それとも本当にただの鉄屑なのか？」
誰も居ない空間に投げ掛ける。
勿論答えなど帰ってくるはずもない。
刀身を鞘から抜き出し紋を見てみるとしっかりと“朱雀晴明国永”と掘られていた。
あの日、降谷が朱雀に帰ってこなくていいと言った日、朱雀はただの刀剣へと戻ってしまった。
赤井は地面に乾いた音をたてて落ちた刀剣を驚いた顔を隠すこともできずにただただ見ていた。
真剣に自身を見つめた彼女が消える前に願ったことはたった１つ。
『どうか、透を泣かせないで欲しい』
自分が消えるというのに他人のことを願う彼女の目に嘘はなかった。
その目に赤井は頷くしかなかったのだ。
刀身を鞘に戻すと素早くライフルを組み立てケースにしまう。
これから組織の裏切り者を片付けるという任務が入っていた。
裏切り者の名前は
「スコッチ……」
公安からのNOCだという彼をどうにかして助けたい。
しかしもしもの時は……
「彼を泣かせない約束だ。」
それならば自分が罪を被ればいいと赤井はそう思っていた。
自身への恨みが彼を奮い立たせるなら、それで彼が泣かないでいてくれるなら彼女の最後の願いを果たせたことにならないだろうか。
ライフルケースを背負うとチラリと真紅の刀剣に目をやる。
どうしてか持っていかなければならない気がして手に取った。
しかしどう考えても持っていけるだけのスペースはない。
赤井はライフルケースから中身を出すと迷うことなく朱雀をいれた。
赤井自身何をやっているのかと疑問に思う。
それでもそれが正しい気がしてならない。
「……行くか。」
誰にいうとでもなく立ち上がるとそのままセーフティハウスを後にした。
ケースから出されたライフルが部屋の中心にポツリと佇んでいた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 114人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
吹雪(プロフ) - 僕も陰陽師大好きです！この作品は世界観が瞑想している気がしますがそう言っていただけると嬉しく思います。これからもよろしくお願いしますm(__)m (2019年5月7日 21時) (
レス) id: 46e13fa611 (このIDを非表示/違反報告)
架印��(プロフ) - 陰陽師(野村萬斎&伊藤英明さんの映画)好きの私…タイトルに興味を惹かれて読んでみたのですが、世界観に一気に引き込まれました。更新頑張って!！ (2019年5月6日 20時) (レス) id: cb6e7377c2 (このIDを非表示/違反報告)
ミリア - 気に入った作品で続きが楽しみです今後他の作品を作る予定があったらリボーンのツナ♀逆行か雲雀の姉か妹か娘がワールドトリガーかヒロアカかアニメKとコラボかトリップか転生した作品が読んで見たいです説明が下手ならすみませんこれからも応援します (2018年3月13日 22時) (レス) id: 9bec705c08 (このIDを非表示/違反報告)
吹雪(プロフ) - 苦手なお話に挑戦してくださってありがとうございます。そういった方からの嬉しいお言葉はとても自信になりました。これからもよろしくお願いします！！ (2018年2月20日 10時) (レス) id: 4e2a82a17c (このIDを非表示/違反報告)
寝夢(プロフ) - 刀剣女士の話は少し苦手でしたがこのお話は何の疑問もなくすんなりと読めました。改稿も程々で誤字脱字も少なかったのでとても読みやすかったです。更新心待ちにしています！ (2018年2月20日 8時) (レス) id: 671ce60c1e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：吹雪 燐 | 作成日時：2017年9月14日 19時
