2 ページ3
「紅鶴っ！！」
勢いよく飛び起きた鶴丸は妹である朱雀の愛称を叫んでいた。
「今のは、なんだ？」
肩で息をしながら額に浮かんだ脂汗を拭う。
嫌な予感がしてやまない。
前任の審神者である主が今の審神者に殺されてからこの本丸はいわゆるブラック本丸と呼ばれるものへと変わってしまった。
鶴丸の周りも驚くほどに変化した。
驚きが大好きであった鶴丸は驚きが大嫌いになるほど悔しい思いをした。
朱雀が後任の審神者に夜伽を命じられたのだ。
鶴丸はあのときの悔しさを今でも忘れられない。
泣くことも笑うこともできなくなった朱雀が自分と同じ黄金色の瞳に光を宿さず、驚くほど美しい綺麗な偽の笑顔を張り付けて部屋に帰ってきた。
愉快なことが大好きで、愉快を追い求めいつも楽しそうに子供のように笑っていた朱雀はその一晩で死んでしまったのだと鶴丸は絶望した。
それから毎晩、朱雀は審神者に呼ばれ同じ刀派どうしにあてがわれているこの部屋は今鶴丸しかいない。
寂しかったし苦しかった。
妹を助けることもできずに誰よりも苦しい役を１人でやらせてしまった。
あの時と同じような嫌な予感が鶴丸の身体中を支配していた。
なにかある、なにかあるんだ。
だがそれはなんだ？
落ち着いて考えようと１つ息をはいたとき、広間の方から大きな音が聞こえた。
まるで誰かが戦っているかのような音だ。
嫌な予感がいっそう強くなる。
鶴丸は本体を持ち急いで大広間に向かった。
大広間につけばそこには沢山の刀剣達が集まって中を覗いていた。
鶴丸もその輪に加わろうとしたとき手を強く後ろに引かれた。
「鶴さんは見ちゃダメだ。」
「貞坊！？」
太鼓鐘貞宗は悲しそうな目で鶴丸を見つめていた。
遠くから三日月宗近が慌てたように向かってくるのを同じ三条の者が止めている。
何が起きているんだ。
「鶴丸国永と三日月宗近がいるのか。」
大広間から大嫌いな男の声が聞こえてきた。
それと同時に俺の体は勝手に貞坊を振りほどき本体を抜刀しながら大広間へと進んでいった。
中を見て鶴丸は声を失った。
朱雀がいた。
まるで罪人のように後ろ手に縛り上げられ至るところから血を流した愛しい妹がそこにいた。
「朱雀っ」
三日月が悲痛な声をあげて朱雀に駆け寄ろうとするが言霊に縛られ動くことができなかった。
「兄様、三日月……」
朱雀は悪戯が失敗した時のような顔で俺たちの名前を呼んだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 114人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
吹雪(プロフ) - 僕も陰陽師大好きです！この作品は世界観が瞑想している気がしますがそう言っていただけると嬉しく思います。これからもよろしくお願いしますm(__)m (2019年5月7日 21時) (
レス) id: 46e13fa611 (このIDを非表示/違反報告)
架印��(プロフ) - 陰陽師(野村萬斎&伊藤英明さんの映画)好きの私…タイトルに興味を惹かれて読んでみたのですが、世界観に一気に引き込まれました。更新頑張って!！ (2019年5月6日 20時) (レス) id: cb6e7377c2 (このIDを非表示/違反報告)
ミリア - 気に入った作品で続きが楽しみです今後他の作品を作る予定があったらリボーンのツナ♀逆行か雲雀の姉か妹か娘がワールドトリガーかヒロアカかアニメKとコラボかトリップか転生した作品が読んで見たいです説明が下手ならすみませんこれからも応援します (2018年3月13日 22時) (レス) id: 9bec705c08 (このIDを非表示/違反報告)
吹雪(プロフ) - 苦手なお話に挑戦してくださってありがとうございます。そういった方からの嬉しいお言葉はとても自信になりました。これからもよろしくお願いします！！ (2018年2月20日 10時) (レス) id: 4e2a82a17c (このIDを非表示/違反報告)
寝夢(プロフ) - 刀剣女士の話は少し苦手でしたがこのお話は何の疑問もなくすんなりと読めました。改稿も程々で誤字脱字も少なかったのでとても読みやすかったです。更新心待ちにしています！ (2018年2月20日 8時) (レス) id: 671ce60c1e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：吹雪 燐 | 作成日時：2017年9月14日 19時
