変わってしまった日常 ページ2
とある本丸で朱雀は１人、縁側に腰掛けながらどんよりと曇った空を眺めていた。
その時ふと泣き声が聞こえた気がして静かに立ち上がり歩き出す。
声のする方向へ少しずつ近づいていけばとある部屋の前で足を止めた。
“手入れ”
掠れた文字で書かれたこの部屋はここ半年の間１度も使われたことがないため今では誰も近づかない部屋だ。
泣き声はそんな部屋の中から聞こえた。
朱雀が戸に手をかけゆっくりと開ければ五虎退が自身の大きな虎に顔を埋めながら声を殺して泣いていた。
「五虎退。」
朱雀は優しく声をかけた。
呼ばれた五虎退は慌てて顔をあげ必死に涙をぬぐう。
その手をやんわりと握って制し朱雀は優しく五虎退を抱き締めると背中をさする。
「これこれそんなに泣くでない。
目が腫れてしまうぞ。」
優しく諭すようなその声に五虎退はさらに目に涙を溜める。
いっこうに泣き止まない五虎退に朱雀は困ったように笑う。
「あいすまぬな。
守ってやることも救ってやることもできずに……
我は無力な守護刀だ。」
「ちがっ、違います！
朱雀様は僕達を守ってくださっています！
貴女のお陰で誰も堕ちずに折れずにいるのですから。」
必死に首を横に振り違う違うと言い続ける五虎退を見て朱雀は心が痛んだ。
こんなにも心優しい刀剣を不幸にしてしまったのは自身であることを朱雀は知っている。
それ故に朱雀は心が痛かった。
傷つく仲間達を見るのがこの上なく辛い。
「それは違うぞ、五虎退。
皆は我を恨むべきなのだ。
それなのに、そなた達はとても優しい。
礼を言うぞ。」
五虎退には何故だかこれが別れの言葉に聞こえた。
朱雀のただならない気配に五虎退は涙を引っ込めて顔をあげた。
朱雀は笑っていた。
それはとても美しい笑顔で。
「そうそう、よく泣き止んだな。
偉いぞ。
さて、兄弟の元へ送ってやろうな？」
五虎退は自身の手を引き前を歩く脇差の女刀剣士の後ろ姿を見つめた。
自分よりもはるかにボロボロなその姿は誰よりも強くそしてどこかへ飛んでいってしまいそうなくらい儚く見えた。
五虎退を粟田口の部屋へ送り届けると朱雀は少し離れた場所まで行き後ろを振り返った。
(必ず助けてやるからな。
そしたらまた、みんなで幸せに笑っていてくれ。)
祈るように心の中で語りかけ朱雀は覚悟の宿った目でしっかりと前を見据え歩き始めた。
その手の中には自身の本体が固く握られていた。
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吹雪(プロフ) - 僕も陰陽師大好きです！この作品は世界観が瞑想している気がしますがそう言っていただけると嬉しく思います。これからもよろしくお願いしますm(__)m (2019年5月7日 21時) (
レス) id: 46e13fa611 (このIDを非表示/違反報告)
架印��(プロフ) - 陰陽師(野村萬斎&伊藤英明さんの映画)好きの私…タイトルに興味を惹かれて読んでみたのですが、世界観に一気に引き込まれました。更新頑張って!！ (2019年5月6日 20時) (レス) id: cb6e7377c2 (このIDを非表示/違反報告)
ミリア - 気に入った作品で続きが楽しみです今後他の作品を作る予定があったらリボーンのツナ♀逆行か雲雀の姉か妹か娘がワールドトリガーかヒロアカかアニメKとコラボかトリップか転生した作品が読んで見たいです説明が下手ならすみませんこれからも応援します (2018年3月13日 22時) (レス) id: 9bec705c08 (このIDを非表示/違反報告)
吹雪(プロフ) - 苦手なお話に挑戦してくださってありがとうございます。そういった方からの嬉しいお言葉はとても自信になりました。これからもよろしくお願いします！！ (2018年2月20日 10時) (レス) id: 4e2a82a17c (このIDを非表示/違反報告)
寝夢(プロフ) - 刀剣女士の話は少し苦手でしたがこのお話は何の疑問もなくすんなりと読めました。改稿も程々で誤字脱字も少なかったのでとても読みやすかったです。更新心待ちにしています！ (2018年2月20日 8時) (レス) id: 671ce60c1e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：吹雪 燐 | 作成日時：2017年9月14日 19時
