15.しほひにみえぬ ページ48
.
A「………。」
試合が終わると即座に立ち上がり
新の方には目もくれずに会場を出た。
この酷く荒れた気分を
どう処理したらいいものか分からずに
ただ拳を握り自らの腿を叩き続ける。
新「A？」
A「ちょっとほっといて。」
話なんかできない。
構わないで。
内に溜めた黒いものが溢れてしまうから。
落ち着くまで待って。
そう思うのに
新「…ごめん。」
ぷつりと何かが切れた。
A「…ごめんって何？
やっぱ謝るようなことがあるんだ？
おかしかったもんね新。
12枚差の束負けとか！
私に譲ろうとか思ったわけ？
私は新との真剣勝負、って
楽しみにしてたのに馬鹿みたいじゃん！」
新と公式試合…
って一人で勝手にわくわくしといて、
こんな八つ当たり。
大人気なくてくだらなくて…
分かってるのに言葉がどんどん零れる。
新「ちょ落ち着き。」
A「落ち着けないから
ほっといてって言ったんじゃん！」
近くで私を制する新の身体を
ぐいっと押し退けた。
新「…ッ！」
A「……？」
さほど力は込めていない筈なのに
顔をしかめて肩を庇う新。
反射的に捲った新のＴシャツの袖。
そこから覗く
程よく筋肉質な色気ある肩に
一瞬、胸が脈を打つ。
いや…そんな場合じゃない。
A「なに……これ…。」
右肩には痛々しく青みがかった大きな痣。
まだ腫れが残っていて
わりと新しいものだと見て分かる。
A「え、これどうしたの？」
新「……昨日、自転車とぶつか」
A「ぶつかった？！」
慌てるばかりに新の言葉を遮った。
新「いや、ぶつかりそうになって……
……よろけて電柱に思いっきし打った……。」
私の慌てぶりが余程面白いのか
声を震わせながら話す。
A「そんなんで一日試合してたの？
何で言わないの！」
新「自分の不注意や。
ほんなん負ける理由にはできん。」
A「はぁ………。」
さっきまでの憤りはどこへやら、
すぅっと熱が引くと共に
どっと疲労が押し寄せ壁に背をついた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 399人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
そら(プロフ) - ひなさん» ご指摘ありがとうございます！全然気づかずすみません(^^;訂正致しました。今後も誤字脱字などありましたら教えて頂けると助かります(^-^)お話の感想もありがとうございます。今は更新停止してますが、必ず完結させるので気長にお待ち頂けたら幸いです♪ (2020年7月5日 20時) (
レス) id: 6b835fc275 (このIDを非表示/違反報告)
ひな(プロフ) - あの…ゐなのささはらの「真島くん」が「真嶋くん」になっています…。細かくてすみません…。お話は凄く面白いです！他の小説は、恋愛がメインですけど、競技かるたのこともたくさん書いてあって、面白いです！ (2020年7月4日 3時) (レス) id: 065f86c58e (このIDを非表示/違反報告)
そら(プロフ) - アミさん» ありがとうございます！今後ともよろしくお願いします♪ (2018年10月4日 1時) (レス) id: 6024975a6b (このIDを非表示/違反報告)
アミ(プロフ) - とっても面白いです！これからも頑張ってください！応援してます！ (2018年10月3日 23時) (レス) id: 7df7bc8953 (このIDを非表示/違反報告)
そら(プロフ) - のぞみさん» コメントありがとうございます(^ ^)ここ最近中々更新できていませんが、頑張りますので今後ともよろしくお願いします♪ (2018年9月29日 0時) (レス) id: 6024975a6b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：そら | 作者ホームページ：https://plus.fm-p.jp/u/aratasosa
作成日時：2018年5月25日 13時
