春、3話 ページ4
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二人は公園へと戻りベンチに腰を掛けていた
公園へ戻る途中にも道ゆく人に声をかけてみたが、男性を認識する人は誰一人居なかった。
『おかしいねえ。Aにはおにーさんが見えるしさわれるのに。』
やっぱりおにーさんはおばけなのかな?
少女は男性の手をにぎにぎと触りながら言った
「…仮にもし俺がお化けだったとして、お嬢ちゃんは怖くないの?」
『ぜんぜんへーき!!Aが怖いのはねー、バッタとかセミとか!カブトムシとかクワガタはへいきなんだけどね』
「そうなんだ…」
一言呟き、男性は空を見上げた
この先どうしたら良いのか分からず他愛のない雑談をポツポツとしていると、17時を知らせるチャイムが街に鳴り響き始めた
『あっ!かえらなきゃ!』
ぴょいとベンチから立ち上がり、ランドセルを背負い直した後、男性の方へ振り返る
『おにーさんどうする?Aのおうちくる?』
「流石に姿が見えないとしても他人の家に上がるのはなあ……どうしたの?」
少女は大きく目を見開いて彼を見つめた
『…おにーさん?なんかすけてるよ』
鳴り響く夕方のチャイムが終わりに近づくにつれ、段々と男性の身体も透明に近づいていく
『…いなくなっちゃうの?』
「うーん…どうだろう。分からないけどさ、明日にはまたお嬢ちゃんには会える気がするんだよね。」
勘だなんだけど。そう笑って少女の頭を柔らかく撫でた
『Aもわからないけど、会えるきがする!あしたもおにーさんに会いにここにくるね!』
「会えるか分からないのに?」
『おにーさんもAも会えるっておもってるから、きっと会えるよ!
…あっ!Aはね、門真Aって言うよ!』
その瞬間、男性は目を見開いた
なにか口を開きかけたとき、夕方のチャイムが終わりそれと同時に彼の姿もなくなった
『あ…』
少女は彼が立っていた場所をしばらく見つめ、何かを思いついたのか急足で帰路へ着いていった
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作者名:小春日和 | 作成日時:2021年5月27日 0時