春、1話 ページ2
・
あるところに、どこにでもいる平凡な少女がいました。
「Aちゃん!ばいばーい!」
『ばいばーい!』
小学生になってはじめての春
知らないことばかりでまだまだ慣れない環境
だけど、幼稚園生の頃から変わらない登下校の道にある公園
そこには一本の巨大な桜の木が生えていて、幼稚園の毎日のお散歩コースで通っていた道だった
『わぁ〜!!』
雨の様に沢山舞い落ちる花弁に惹かれて少女は一人、ランドセルを背負ったまま公園へ足を伸ばしていった
桜の木の下に駆けていくと
「…ここは?」
毎日の様に通っていたのに、見慣れない男の人が立っていた
『おにーさんもさくらを見にきたの?』
「え?いや……お嬢ちゃんいきなりで悪いんだけど、ここってどこなのか分かる?」
男性の質問に少女はキョトンと首を傾げる
『おにーさん、まいごなの?』
少女の質問に男性は苦笑いで答えた
「かっこ悪い事にそうみたいなんだ。…良ければ交番まで案内して欲しいな。
えーっと…名前教えて貰ってもいいかな?」
『しらない人にはなまえ、おしえちゃだめだよってママに言われたから…』
「あー…そっか、偉いね
じゃあ俺だけでも名乗っておこうか、俺の名前は……」
名前は…そこから言葉が途切れ、男性は頭を抑えしゃがみ込んだ
それを見た少女は余計に不思議に思うばかりだった
それから暫くの沈黙の後、ポツリと言葉を発した
「…思い出せない」
『おにーさん、おなまえわからないの?』
「…ここの桜の木だけは見覚えがあるんだ。でもそれ以外、何も思い出せない。自分の名前も職業も、ここがどこかも」
『うーん……あっ!これ!!』
しばらく唸り声を上げ男性を観察した少女は何か思い付いたのか、男の人が着ている黒いチョッキを引っ張った。
『えと、ぼー…だん?チョッキ!パパけーさつかんだからA、わかるんだ!!』
だからおにーさんはきっとけーさつかんだよ!
ニコニコと笑顔で言った少女の言葉に、男性はただ困惑した
「警察官…」
少女は考える暇も与えず男性の袖を引っ張り公園の出口へと向かい出した
「えっ、お嬢ちゃんどこ行くの?」
『こうばん!おにーさんがけーさつかんだったらこうばんの人がわかるかも!』
・
24人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:小春日和 | 作成日時:2021年5月27日 0時