30.帰城 ページ30
ただいま、という控えめな声が聞こえて、たまたま玄関近くを通っていた山崎は足を止める。
高くて可愛らしい、自分たち男には到底出せない声。
偶然にも通りかかったのだから、迎えに出よう。そう思い玄関へと向かう。
「おかえりなさい、Aちゃ…………え!!?」
夜も更けてきたにも関わらず、素っ頓狂な声を上げる。
その素っ頓狂な声にびっくりしたAがびくりと肩を震わせ、その様子を見た山崎がまた慌てる。
「どどど、どうしたの、その恰好……」
アワアワと挙動不審な山崎の様子に、Aは何処かバツが悪そうに頬をかく。
「……似合わない、ですか」
「いやいやいやいやなんで!!?似合ってるよ!」
普段、シンプルなメイクにラフな私服しか見たことがなかった山崎は、Aの普段とのギャップにドギマギしてしまう。
鉄壁のガードのせいで忘れかけていたが、Aは元々美人なのだ。
それが、ヘアメイクとコーディネートで存分に活かされている。
「似合ってないなんてとんでもないし!むしろか、」
かわいい、と続くはずだった。
その姿を見るまでは。
「A、お帰ェり」
「沖田さん、ただ今帰りました」
山崎の背後からすっと出てきた沖田の姿に身を固まらせる。
聞かれていた?何処から?何処まで?
かわいい、と言いかけた、あそこまで?
「あの野郎に何かされなかったか」
「されてないですよ、もう。」
さらりとAの隣に並ぶ沖田は、まるで山崎の姿など見えていないかのように話を続ける。
「それよりその服、どうしたんでィ」
「草間さんに頂きました」
「へェ……金持ちは太っ腹だなァ」
Aが自室に戻ろうとするのを、当たり前のように沖田もそれに並ぶ。
「それじゃあおやすみなさい、山崎さん。」と横を通る際に声をかけてくれたAに表情を緩ませていると、その隣からの凍てつくような視線にヒィと情けない悲鳴を上げる。
あの沖田のひっつき方は、他の視線から遮るように、Aを隠すように歩いているようにしか見えない。
きっと気づいていないのは、A本人だけなのだ。
(……沖田隊長、怖ェェエエ!!?)
もし血迷った日には、問答無用で叩き斬られるな、と、疲れた顔で山崎は思うのだった。
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乙愛 - 草間さんのセリフにグッときたがワイは負けん…はっ!総悟!違う私は一筋じゃぁ (2018年12月19日 18時) (レス) id: 89a184ea87 (このIDを非表示/違反報告)
木ノ嶋(プロフ) - 乙愛さん» コメントありがとうございます。良い意味でキュッとして頂けたら幸いです。物語が徐々に動き始めてきましたので、どうか今後も見守ってくれたら嬉しいです。 (2018年12月10日 22時) (レス) id: 24579aa2d7 (このIDを非表示/違反報告)
乙愛 - なんか、心臓キュッってなりました。( ・∇・)きゅーん (2018年12月7日 22時) (レス) id: 89a184ea87 (このIDを非表示/違反報告)
木ノ嶋(プロフ) - アルハさん» 本当に嬉しいお言葉、ありがとうございます。受験生なんですね…この作品で、少しでもアルハ様の応援が出来たらいいなと思っております。ありがとうございました。 (2018年11月28日 7時) (レス) id: 24579aa2d7 (このIDを非表示/違反報告)
アルハ(プロフ) - 受験生の身でありながらついぶっ通しで読んでしまいました・・・笑上から下までタイプですありがとうございます。これからも応援してます! (2018年11月27日 16時) (レス) id: 5e4beefb64 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:木ノ嶋 | 作成日時:2018年8月17日 23時