29.熱烈ロケット ページ29
「……ここまでして頂いて、こんなことを言うのも恩知らずだとは思うんですけれど、」
「はい、何でしょう」
「草間さんは、あの銀行強盗のときに感じた生命の危機のドキドキと勘違いしているんじゃないですか……?」
「吊り橋効果、というものですか?」
「そう……ですね。あそこで私が助けに入ったから、それを…恋とか、一目惚れとかの感情と間違えているんではないか、と……」
ふむ、と草間さんは顎に手を当てて逡巡するように目を伏せる。
その間の私と言ったら、気まずい以外の何ものでもなかった。
運ばれてくるお料理に、美味しそうだと思う余裕さえないくらいには、この空気に緊張してしまっていた。
「……仮にそうだとしても、だったら何が悪いのです?…と、僕は思いますが?」
「え?」
す、と上げた顔は鼻筋が通っていて、誰が見ても美形だとわかる。
困惑する私をよそに、草間さんはぱくりとひとつ、料理を口に運ぶ。
「Aさんもどうぞ」
「あ……いただきます」
恐る恐る、草間さんと同じように口に運ぶ────あらま、美味しい。
「ふふふ、美味しい、って顔に書いてますよ」
「っ、ほんとですか、恥ずかしい」
「本当に、知れば知るほど可愛らしいですね、貴女は。
……きっかけは強盗から助けて貰ったから、吊り橋効果のせいだから。僕にとってはそれでも良いんです。
けどね、貴女が思ってるよりも、遥かに僕はあれからずっと貴女のことを考えています。
どうすればお食事に誘えるのか?どうすればお話できる機会が作れるのか?
勘違いだと一言で言い表してしまうのは簡単です。けれど僕は、そこから始まる感情を覚えてしまいました。
貴女の騎士さんは僕のことをボンボンだと言いましたが、中身はあの騎士さんと何も変わりません。
ただ、貴女に恋するひとりの男なのです。」
────熱い。草間さんの感情が、言葉の厚が、想像よりも遥かに熱い。
……それから、自分の顔も。
「……わ、かりました、から、全肯定マシーンをやめてください」
「全肯定マシーン?」
言われ慣れないことを矢継ぎ早に言われて、ぷしゅうと頭がパンクしそうなのだ。
誰とも付き合ったことの無い女には、刺激が強すぎる。
「顔が赤いですよ、Aさん」
「……草間さんのせいですよ」
「嬉しいことを仰ってくれます。
────Aさん、貴女のことが好きです。
どうかこれから、僕とまずお友達から、始めて頂けませんか」
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乙愛 - 草間さんのセリフにグッときたがワイは負けん…はっ!総悟!違う私は一筋じゃぁ (2018年12月19日 18時) (レス) id: 89a184ea87 (このIDを非表示/違反報告)
木ノ嶋(プロフ) - 乙愛さん» コメントありがとうございます。良い意味でキュッとして頂けたら幸いです。物語が徐々に動き始めてきましたので、どうか今後も見守ってくれたら嬉しいです。 (2018年12月10日 22時) (レス) id: 24579aa2d7 (このIDを非表示/違反報告)
乙愛 - なんか、心臓キュッってなりました。( ・∇・)きゅーん (2018年12月7日 22時) (レス) id: 89a184ea87 (このIDを非表示/違反報告)
木ノ嶋(プロフ) - アルハさん» 本当に嬉しいお言葉、ありがとうございます。受験生なんですね…この作品で、少しでもアルハ様の応援が出来たらいいなと思っております。ありがとうございました。 (2018年11月28日 7時) (レス) id: 24579aa2d7 (このIDを非表示/違反報告)
アルハ(プロフ) - 受験生の身でありながらついぶっ通しで読んでしまいました・・・笑上から下までタイプですありがとうございます。これからも応援してます! (2018年11月27日 16時) (レス) id: 5e4beefb64 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:木ノ嶋 | 作成日時:2018年8月17日 23時