16.人生初プロポーズ ページ16
その時だった。カウンターの向こう側で、男性職員が金を詰め込んでいるのを見張っていた男が、どさりと倒れ込んだのは。
そこにあったのは見知らぬ黒い影。長いものを手にしている。あれは────刀?
「もう、遅いですよ、っ!」
女性が苦し紛れに、に、っと笑った。
刹那、吹き飛ばされる男の図体。
連続してもう片方の男の喉元に突きつけられたのは────紛れもなく、刀身。
「御用改めである。大人しくしなせェ、真選組でさァ。」
色素の薄い髪、整った顔、黒い隊服。
瞬きする間に、最後のひとりとなった犯人の喉元には切っ先が突きつけられていた。
「現行犯逮捕。」
開け広げられた銀行の出入口から真選組がなだれ込んでくる。あれよあれよといううちに、床に伸びていた4人と、切っ先を突きつけられていた男の手にはお縄がかけられていた。
「あらら、どうしたんでィその血。美人な顔が台無しだ」
「嫌味も大概にしてください。せっかく非番だったのに。」
額からつうと血の筋が伝って顔を縦断しているというのに、その姿は美しい。さっきの、犯人たちの前に立ちはだかる凛とした背中が頭に蘇る。
「もっと早く突入出来たんじゃないですか?」
「馬鹿言うんじゃねェや。人質の安全が確保出来ねェ限り、無闇に突っ込むなんざする訳ねェだろうが。仮にもお巡りさんだろ」
「仮にも、じゃなくてちゃんとお巡りさんですけどね。」
「まァ、お前ェがあいつら引き寄せてたおかげで、突入のタイミングが取れたっつーのはあるな。」
「感謝してくださいね、お巡りさん」
「お前ェもお巡りさんだろーが」
男隊士と、彼女の会話は何も耳に入らない。ただ、身体に犯人から受けた傷を残しながらも、その美しい笑顔を浮かべる様に、目が奪われる。
気づけば、引き寄せられるように青年は彼女に近づいていた。
「…あ、お怪我されてますよね、あちらで治療を、」
彼女が青年に気づいて声をかける。全てを言い終わる前に、青年は彼女の手をがしりと掴んだ。
それはもう、運命の出会いを見つけたかのように。
「貴女は美しい。どうか僕と結婚してください。」
キラキラと輝く瞳に冗談の気配は感じられない。言葉の意味が理解出来ない彼女────Aは目をぱちくりさせて、それからゆっくりと口を開いた。
「…………………………………………………は?」
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乙愛 - 草間さんのセリフにグッときたがワイは負けん…はっ!総悟!違う私は一筋じゃぁ (2018年12月19日 18時) (レス) id: 89a184ea87 (このIDを非表示/違反報告)
木ノ嶋(プロフ) - 乙愛さん» コメントありがとうございます。良い意味でキュッとして頂けたら幸いです。物語が徐々に動き始めてきましたので、どうか今後も見守ってくれたら嬉しいです。 (2018年12月10日 22時) (レス) id: 24579aa2d7 (このIDを非表示/違反報告)
乙愛 - なんか、心臓キュッってなりました。( ・∇・)きゅーん (2018年12月7日 22時) (レス) id: 89a184ea87 (このIDを非表示/違反報告)
木ノ嶋(プロフ) - アルハさん» 本当に嬉しいお言葉、ありがとうございます。受験生なんですね…この作品で、少しでもアルハ様の応援が出来たらいいなと思っております。ありがとうございました。 (2018年11月28日 7時) (レス) id: 24579aa2d7 (このIDを非表示/違反報告)
アルハ(プロフ) - 受験生の身でありながらついぶっ通しで読んでしまいました・・・笑上から下までタイプですありがとうございます。これからも応援してます! (2018年11月27日 16時) (レス) id: 5e4beefb64 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:木ノ嶋 | 作成日時:2018年8月17日 23時