【銀魂】ああどうも、沖田さん。

1.御早うから頂きますまで ページ1

「……ん、」

「おー」

「…おはようございます、沖田さん」

「はよーさん」

「ところで沖田さん」

「なんでィ」

「なぜ沖田さんがそこにいるんでしょう」



ぱちりと目を覚まして、最初に目に入ったのは端正な顔立ちだった。

朝一番に綺麗な顔を拝めて幸せです。……なんて呑気なことを考えるほど、頭が馬鹿になっているはずもなく。

私の真横に転がって、じいっと穴が開きそうなほど見つめられて(？)いるのだから、当たり前の疑問である。



「Aがそこにいるからでさァ」

「……ちょっと意味がよくわかんないですけど」



とはいえいつまでもこの寝起き顔を異性の相手に見られていて良いものなのか。

もぞもぞと布団から這い出ると、すぐに洗面所に向かう。



「そんなに急いで準備しなくても、朝食まではまだ時間があるってーのに。」

「沖田さんがいるから準備してるんですよ」



歯を磨いて、顔を洗う。その間、仄かな気遣いなのか、洗面所に沖田さんは入ってこなかった。

タオルを顔に押し当て、化粧水と保湿クリームとを手早く済ませる。

部屋まで戻ってきて、着替えるためにハンガーにかけられた隊服を手に取る。

その様子を、沖田さんはじっと眺めていた。



「……今から着替えます」

「見てりゃわかる」

「見ないでください」

「じゃあ目ェ閉じてる」

「外で待っててください」



ぽいっと沖田さんを部屋から追い出し、寝巻きをするすると脱いで、着慣れた隊服を身につけていく。

朝はまだ涼しい方だけれど、お昼になればぐっと暑くなる。もうそんな季節だった。

隊服もクールビズという波に乗っかるべきだと思うのに、いつまでも暑苦しい格好だ。

半袖が支給されないので(というかそもそも無いらしい)、袖を折って腕を出す。

着替えを終えてすーっと襖を開けると、沖田さんは大人しく柱に背を預けて胡座を組んでいた。



「……沖田さんは着替えないんですか？」

「朝飯までまだ時間があんだろ」

「まあ、そうですけど」



もう入っても良いと判断するや否や、まるで自分の部屋のように無遠慮に入ってくる。

もちろん私の部屋に面白みのあるものなんてない。



「今日は随分と早起きなんですね」

「まァな、早く目が覚めちまった」



くあ、とひとつ沖田さんが欠伸を零す。



「……あ、」

「ん？」

「寝癖ついてます」

「まじでか」

「まじです」



ぴょん、と後頭部の跳ねているところを摘むと、じとりと睨まれて、思わず笑みが零れた。

2.末っ子に構いたい→

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す