#53 ページ6
・
「────んでさ、そこで剛なんて言ったと思う?目玉焼きはそのまま食うのが1番だべ、っつったの。それ言われちゃおしまいじゃん。醤油だのソースだの言ってる私がめちゃくちゃ馬鹿みたいじゃん?!」
「……なんでお前はここにいんの」
8月が終わり、長いようで短かった夏休みが過ぎ去った。2学期に突入して間もない時期、私は学外で会った伍代と共に居ることが増えていた。
「夏前までは難破とべったりだっただろ、なんで急に俺んとこに来るようになった」
「だって剛は部活してから帰るからタイミング合わないし。伍代は学校終わったらすぐ出てるでしょ、私もそうだし。だったら真っ直ぐ帰るよりも伍代と話してから帰る方がいいじゃん」
きっかけは、帰りのホームルームが終わってからすぐ帰宅する私が、しかしそのまま家に帰るのも何だかなあ、と思っていたときにたまたま伍代に遭遇したことだった。伍代も基本的にずっと市松に居座っているタイプではない。帰りの時間が同じくらいになるのは必然だった。
「そうだ、夏休み最終日に釣り行ったんだっけ。釣れた?」
「……お前、しばらく俺に近づくな」
「えっ、突然の塩対応すぎない?」
ぎろり、と睨まれてたじろぐ。確かに私が一方的に話していることの方が多かったし、それを聞いてる伍代が楽しそうだったかと聞かれれば……そんなことはなかったんだろうなとは思っていたけれど。そんなに目玉焼き談義が気に食わなかったんだろうか。
「いいから近づくな。わかったな?」
「なんもわかんないけど。え、そんなに私の話聞いてるの嫌だった……?ごめん……これからは伍代の話も聞くからさ……」
「ッ、うぜえんだよ!」
伍代の珍しい大声にびくっと肩を揺らす。はっと我に帰ったように目を見開いた伍代は視線を泳がせると、私に背中を向けて歩き出した。
「……待って伍代、何かあった?」
その腕を掴んで呼び止めると乱暴に振り払われてしまう。さっきから一向に目が合わない。何か隠していることがあるのかもしれない。
「伍代、」
「お前には関係ねえ」
背中を向けられたままぴしゃりと言い捨てられ、すたすたとその場から去っていこうとする伍代。頑なに何も話したがらない後ろ姿にどっかの誰かさんを思い出して、ムカムカとした気持ちが湧いてくる。
・
373人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぺぺろんちーの(プロフ) - いつもお話が面白くて更新楽しみにしています!続きも気になります〜♡! (2022年6月24日 17時) (レス) @page34 id: 3ba0f6d0b0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:木ノ嶋 | 作成日時:2022年6月19日 11時