元ヤンの幼なじみが普通とヤンキーを両立しようとするので見ている私は気が気ではない。 (ページ4)

今日:16 hit、昨日:1 hit、合計:53,629 hit

#51 ページ4

･

────Side.You

それから私たちは型抜き、輪投げ、くじ引き、ヨーヨー釣りなどの遊びから、焼きそばやりんご飴など腹を満たすための屋台を回りに回り尽くし、かなり満喫していた。

お互いよく笑うもの同士、私たちの間には騒がしさが絶えない。時折小突き、からかい、小競り合いを交えつつどんどんと歩みを進めていく。いつしか私たちの手元にはヨーヨーだったり綿あめだったりが集まっていて、正しく祭りを存分に楽しんでいる人間の姿へと変貌していた。

夏祭りの定番と言えばやはり金魚すくいは欠かせない。視界に映るや否や、既に勝負は始まっているとばかりにその屋台に向かって駆け出す。ポイは1枚限りの真剣勝負。どちらが多く金魚をすくえるか。やけに真面目な顔をしたヤンキー服の男女が真剣に金魚をすくっている様は、店のおじちゃんから見たら少し面白光景だったかもしれない。

「あ！」

と剛の悲しみに満ちた声が聞こえてそちらに視線を向けると、ポイが大きく破れていた。「ふっ…この勝負、貰った！」としめしめと笑うも、力加減が下手そうなくせに剛のすくった金魚は私よりも多い。まだポイが破れていない分、勝機はある。目をぎらつかせ、ここだ！と角の金魚をすくうため水にポイを差し込んだときだった。

「……お前ら何やってんだ」

頭上からそう声をかけられ剛と同時に顔を上げると、その瞬間ポイが敗れてしまった。

「あ！破れた！！……って、伍代？」

「ははっ、射的は負けたけど金魚すくいは俺の勝ちだな！……んなことより伍代、奇遇だな」

「…すげー楽しんでんな。お前らの声がデカすぎて遠くからでも聞こえてたぞ」

「ごめんごめん、久しぶりのお祭りだから楽しくなっちゃっ…て…さ…」

はあ、とため息をついて見せる伍代の斜め後方、他人という距離感ではないそこに、浴衣を着た女の子がちらちらと伍代と、私たちのことを見ていた。

「……お、」

「お？」

訝しげな表情を浮かべる伍代に、斜め後ろにいる女の子のことを視線で示す。状況を把握出来ていなかった剛も、私の視線を追った先に何があるのかに気づいて口を「お」の形で固めていた。

「やっぱ伍代、女いるんじゃん……」

「……そういうんじゃねえよ、ただ誘われたから来ただけだ」

「これがモテる男の言い分だよ……剛聞いた……？」

「そういうんじゃねえ、って、じゃあどういうんだよ……」

ひそひそと囁きあう私たちを呆れたように見下ろすモテ男、伍代。