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#73 ページ26

────Side.剛



「剛!」



悲痛にも聞こえる叫びが遠くの方で聞こえて、ゆっくりとそちらに顔を向けるとひどく心配した表情のAが俺を覗き込んでいた。



「この血の量……私のことわかる?名前呼べる?」

「……A」

「この指何本?」

「さんぼん……」

「とりあえず意識はしっかりしてんね。この血は……頭殴られた?道具使われたか」

「まあ……ちゃんとぶん殴ってきたけどよ……」



こんなに近くにいるはずなのにAの声が遠い。多分血が出過ぎてるんだろう。Aは急いでいつも持ってる救急セットを取り出し、応急処置として簡単に止血する。



「……クソ、包帯すぐ血で染まるな。今すぐ病院行こ。ゆっくりでいいから。立てる?寄りかかっていいよ」



俺の腕を自身の肩に回してゆっくりと歩き出す。俺よりもよっぽど華奢な身体で俺のことを支えている。頭から流れた血がAの制服を汚していることに気づき、無理やりその身体を引き剥がそうとするも断固として離れないその意思に、俺の方が先に折れる。



「血、ついちまってる」

「気にしねえよ。洗えば落ちる」



昔から、こういうところだよな、と思う。自分のことは二の次で、いつだって他の奴の────他の奴?いや、こいつは他の奴のことも心配する奴だったけど、自分のことなんかほっといて誰よりも優先していたのは────



(……いや、思い上がりすぎか)



自分で使うよりも他人に使うために救急セットを持ち歩いてるような奴なのだ。俺だけじゃなく、いろんな奴のことを心配して応急処置してる。……何も、俺だけじゃ、ない。

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ぺぺろんちーの(プロフ) - いつもお話が面白くて更新楽しみにしています!続きも気になります〜♡! (2022年6月24日 17時) (レス) @page34 id: 3ba0f6d0b0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:木ノ嶋 | 作成日時:2022年6月19日 11時

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