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#70 ページ23

男は驚いたように目をぱちぱちさせ、私を頭の先から爪先まで見回す。



「えっと……なん、ですか」

「あの、えーっと……覚えてない?」

「はい……?」

「あー、そか、私中学んとき金髪だったから……」

「え……?」



瓶底メガネを外し、結んだ髪を解いて前髪をかきあげる。



「葛城A。萬中で一緒だった。……ほら、私が間違えて父さんの弁当の白米の方と自分の白米の方だけ持ってきたときにさ、おかず分けてくれたでしょ、覚えてない?」

「か、葛城さん……!?」

「覚えててくれてありがと、関口」



夕焼けに染まる空の下、少し話せる?と訊くと関口はこくりと頷いた。



「その制服……白百合だよね」

「うん。そうだよ」

「そっか……葛城さんも白百合なんだ」

「私、も?」

「あっ、いや……」



しまった、と言いたげに関口は顔を顰める。



「もしかして、剛のこと知ってる?」

「……うん。良かった、葛城さんも知ってたんだ」

「まあ……結果的には知ってるってことになるけど。中学んときは教えてくれなかったから、白百合に入ってから知ったんだよね、剛がいること」

「そう……なんだ」

「私も言ってなかったんだけどさ。白百合行くってことは結構ギリギリに決めたから」



さっきの反応から察するに、きっと関口は剛のことについて口止めされていたのだろう。それを誰にも言わず、今になっても(うっかりボロは出たものの)言いふらそうとしないところに、関口の真っ直ぐな性格が透けて口元が緩む。



「高校入ってから剛には会った?」

「あ、実はさっきまで……」

「そうなの?!偶然だなぁ」



そうか、剛、関口に会えたのか。
特別親しくしているようには見えなかった、けれど剛にとって関口が大きな存在だったことは違いないはずだ。遠くから見ていただけだけれどそれは伝わってきたのだから。



「呼び止めちゃってごめんね、関口も勉強頑張って」

「うん。ありがとう」

「じゃね」

「……葛城さん!」



歩き出そうと1歩踏み出したとき、名前を呼ばれて足を止める。



「……その、黒髪もすごく似合ってるね」

「ありがと!これでも学校ではシャバい優等生としてやってっからね。関口も高浜東陽の制服よく似合ってんべ!」

「……ありがとう!」



そう言って笑う関口はとても良い顔をしていた。今から思えばあれは、固い決心とか覚悟とかそういったものを秘めているような表情だったように思える。

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ぺぺろんちーの(プロフ) - いつもお話が面白くて更新楽しみにしています!続きも気になります〜♡! (2022年6月24日 17時) (レス) @page34 id: 3ba0f6d0b0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:木ノ嶋 | 作成日時:2022年6月19日 11時

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