元ヤンの幼なじみが普通とヤンキーを両立しようとするので見ている私は気が気ではない。 (ページ22)

今日:14 hit、昨日:1 hit、合計:53,627 hit

#69 ページ22

･

────時は過ぎ去り、秋に差し掛かった。紅葉は赤く色づき、制服は徐々に長袖へと移ろっていく。

「参考書？」

「ああ……学校の授業だけじゃ足りねえっつか、参考書使った方が効率良いんじゃねえかと思ってよ」

そんなある日、勉強会を兼ねて剛と図書館に訪れていた。剛が渋い顔をして何かを悩んでいるので何かと聞き出してみたら、そういうわけだ。

「母ちゃんに小遣い貰おうかと思ったけどよ……何に使うんだって訊かれたら答えらんねえし」

「だったら私が使ってるやつ貸そうか？」

「いやー……でもそれだとよ、お前の勉強の邪魔になんだろ」

「いっぺんに全部の参考書使って勉強してるわけじゃないし、別にいいよ」

「……悪いな」

困り顔の剛が遠慮がちに前髪の隙間から見上げてくるので「気にしないでいいってば」とその肩を小突く。シャバい格好をするようになってから気づいたのだが、どうも私はこっちの姿の剛の困り顔にめっぽう弱い。元々端正な顔だとは思っていたが、こんなに困り顔が似合ってしまう男だとは気づかなかった。

────某日。帰り道に本屋に寄ってから家に帰ろうとしていたときのこと。

剛が参考書を欲しがっていたので、どうにか渡せる方法がないかと探っていた。貸す、だけじゃなくて、いっそプレゼントという形に……時期外れの誕生日プレゼントだと言って渡せば素直に受け取ってくれるだろうか、など考えながら、とりあえず今日は一旦帰ろうと帰路についていた。

前から歩いてきた高浜東陽高校の制服の男とすれ違い────思わず足を止める。向こうの男は気づいてないようだったが、私は慌ててその腕を掴んだ。

「ッあの！」

「えっ」