元ヤンの幼なじみが普通とヤンキーを両立しようとするので見ている私は気が気ではない。 (ページ16)

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「────ねえ聞いてる？コンビニの新作のスイーツ、このへんじゃどこも置いてないんだって。でさ、調べてみたら都会の方にしか置いてないらしくって。伍代の分も奢るからお願い！バイク乗せてって！」

「電車使えばいいだろ、なんで俺の後ろ乗りたがるんだよ」

「単純にバイクに憧れあるし、バイク乗ってる伍代かっこいいし、風をびゅんびゅん切るのが気持ちいいじゃん」

「……俺のことタクシーか何かだと思ってんだろ」

「まさか！ ……？」

放課後、辺りが夕焼けに染まる中、手を合わせて伍代に懇願していると、背後からガタイのいいキャップを被った男を筆頭に3人が近づいてきた。キャップの男は険しい顔をして伍代を睨みつけている。

「伍代だな？ちいとツラ貸せや」

この辺じゃあまり見たことがない顔だ。伍代は振り返り私を見ると小さく「ついてくんなよ、まっすぐ帰れ」と呟いて男たちについて行った。

「……穏やかじゃないなぁ」

ついてくるなと言われて一体誰が素直に応じるだろうか。迷うことなく尾行を開始した。

連れてこられたのは廃工場を溜まり場にしたような場所だった。

「ここで俺をフクロにするってか。千鳥の大丸ってのは意外とエグいことすんだな」

「ツレの指折っといてよ……エグいのはテメェだろうが！」

ガシャン！と大丸が傍にあったステンレスの箱を蹴る。響き渡る大きな音に怯む私が身を隠しているのは、おそらくあちらからは姿が見えないであろう場所だ。顔だけ出してその様子を見守る。

「落ち着けって！ゴリラかよ。何の話してんのかわかんねえぞ」

「なんだと？」

「大体その、俺にやられたって奴、ここにいんのか？俺の顔知ってんのか？」

「……そりゃあ、」

……あの大丸とか言う奴、もしかしてバカなんじゃないだろうか。

そこにぱさり、と何かが投げ込まれた。ここからはそれが何なのか見えなかったが、拾い上げた伍代が「俺のグローブ？」と呟く。

「騙されんな大丸。ボコられた部屋に落ちてたんだとよ」

「……マジかよ。こんな古い手に引っかかるやつがいるわけ、」

「このクソ野郎……」

(……居た〜)

伍代は呆れたようにひとつ息を吐き出し、グローブを投げ捨てる。

「……しゃーねえな」

「んぬぅあああー！」

獣のように雄叫びを上げ伍代に殴りかかる大丸。私はそれを見ながら、あくまでも気づかれない程度にゆっくりと身を隠しながらその現場へと近づいた。