#61 ページ14
────Side.伍代
「────悪かったな」
「もういいよ」
真宮から渡された缶コーヒーを素直に受け取る。殴り殴られたところが熱を持ってじんじんと痛む。
「親父のことがあってからよ、周りの目ばっか気になっちまってよ……ツレのお前にまで蔑まれてるような気がして……最低だぜ」
「もういいって言ってんだろうが。……俺はわかってる、お前は良い奴だって。馬鹿だけどな」
「馬鹿は余計だろ!……それより、どこの誰なんだよ、あの変態と……」
真宮が視線を滑らせてとある一点を見る。釣られてその方向へと身体を向けると、思いのほか近くにいたAに驚いた。
「てめ、もしかして話聞いてたのか!?」
「伍代って私ら以外にもツレ居たんだなーって思ってさ」
「お前、いいからもう帰れ!」
「えー、もうこんなに夜なのに1人で帰すの?」
「お前が勝手に着いてきたんだろうが。……クソ、わかったから。あっちで待ってろバカ」
「やったぁ。────……ねえ、真宮っつったっけ」
くしゃりと笑った顔から一変、眉根を寄せて身長差の都合で真宮を見上げるとAはひとつも冗談のつもりではなさそうな表情で囁く。
「まあ、余計な一言だと思うけどさ……次伍代のこと泣かしたら私が許さねえから」
「はあ!?誰が泣いたって」
「あれ、私には泣いてたように見えたけど違うの?」
「泣いてねえよ!あっち行ってろ!」
しっしと手で示すと口を尖らせながら言うことに従った。……ったくあいつは、と手に持った缶コーヒーを口に含む。
「直樹、女の趣味変わったな」
ブフッと飲み込みきれなかったコーヒーを噴き出した。ゲホゲホと噎せる俺を見る真宮はやけに穏やかな表情だ。
「っ、げほ、……俺の女じゃねえよ」
「嘘つけ。こんなところまでついてくるのなんかお前の女じゃなかったら何なんだよ?」
「ただのお人好しだ。それに……あいつはたった1人のことしか見てねえよ」
「けど惚れたんだろ?」
「は?誰が」
「直樹が。」
「……は?」
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ぺぺろんちーの(プロフ) - いつもお話が面白くて更新楽しみにしています!続きも気になります〜♡! (2022年6月24日 17時) (レス) @page34 id: 3ba0f6d0b0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:木ノ嶋 | 作成日時:2022年6月19日 11時