92.ひとつひとつを片付ける ページ42
「彼奴はお前ェから渡されたモンだったら何でも喜ぶだろ、多分。知らねェけど」
「適当ですねえ……」
沖田さんに渡そうと思って当たりをつけていた、けれど自分では入りにくいお店ばかりだったから、銀さんに代わりに買ってきて貰ったもの。
渡そうと思って、喜んで貰えるのか不安になって、結局渡せず終いでずっと自室に隠されている、それら。
今ならきっと、渡せるような気がするから。
「本当に銀さん、いろんなこと、お世話になりました」
「別れの挨拶みてェなことやめてくれる?末永くこれからもお願いしますよ、常連さん」
なんて、笑って言われてしまえば、もう他人行儀な態度なんてとれない。
「んなことよりよォ、1から100まで全部喋ってくれる?置いてけぼりにされた銀さんへのお詫びはこのチョコパフェだけじゃ足りねェんだからな」
「はいはい」
草間さんのこと、沖田さんのこと、全部。
今まで勝手に相談を押し付けられて、詳しいことは聞かないまま、応じてくれた銀さんに。
きっと面白い話なんてないけれど、この人に感謝の気持ちを込めて。
どれくらい時間がかかるのかはわからないけれど、銀さんが満足いくまで、全部お話しよう。
それが銀さんへの報酬だ。
「…良かったなァ、Aちゃん」
「え?」
「だってよ、沖田の話するときの、Aちゃん、どんなときより良い顔してんぜ」
「……そんなに緩んだ顔、してますか」
「あーあ、折角直接的に言わないであげたのに自分で言っちまう?」
「してるんですね……」
恥ずかしい、けれど嬉しい。
そうやって笑う銀さんも、とても優しい顔をしているから。
これを幸せと呼ぶんだろう。そう、思った。
「……そういや、沖田くんと並んで歩いてたあの女は結局何だったの」
「あ」
いろんなことがそれどころではなくて、全く、頭になかった。
「……そういえば、何だったんでしょうね」
「聞いてねェのかよ。ちゃんと聞いといてくれる?俺も気になってんだから」
「はーい…」
すっかり忘れていた、黄川さんのこと。
よくよく思い出してみれば、黄川さんのことがあって私が落ち込んだことだってあった訳だし、放ったらかしには出来ない案件である。
「……、」
聞いてみようかな。本人に。
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乙愛 - 吉沢亮さん、良すぎですよね……。ほんと、沖田さん…。現在1番好きな役者さんです。 (2019年2月11日 10時) (レス) id: 6dafc5383a (このIDを非表示/違反報告)
乙愛 - お疲れ様でした!最後の写真みてみたいです…/// (2019年2月11日 10時) (レス) id: 6dafc5383a (このIDを非表示/違反報告)
ののこ(プロフ) - 毎回更新を楽しみにしていました。終わってしまって寂しさもありますが、素敵な小説に出会えて良かったです。ありがとうございました! (2019年2月10日 1時) (レス) id: c2027c837f (このIDを非表示/違反報告)
sachoco(プロフ) - とても素敵な作品に出会えて幸せでした。ハッピーエンドでとても嬉しかったですし、完結した寂しさの反動も大きく、それ程この小説にハマっていたのだと思います。本当にお疲れ様でした!(実写版沖田さん…本当に完璧と言わざるを得ない程素敵だと私も思いました!) (2019年2月8日 19時) (レス) id: 6ffe0b9ea7 (このIDを非表示/違反報告)
春先未(プロフ) - お疲れ様でした…本当に面白く更新を楽しみにしていた作品だったので終わってしまい寂しさ半分、素敵な作品と出会えたという幸せな気持ち半分です。とても素敵な作品をありがとうございましたm(_ _)m (2019年2月8日 18時) (レス) id: 948ea5509c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:木ノ嶋 | 作成日時:2018年12月14日 8時