【銀魂】いいですか、沖田さん。

83.お巡りさん捕まえて坊ちゃん脅そうなんざ ページ33

「雇い主様が望んでんのは、契約解消の取り消し？よくわかんねェけど、この書類をよーく読んでサインしてくれりゃあ、あの女とアンタは解放され、俺らも元の金額より高い報酬を頂けて、万々歳っつーわけだ。簡単な話だろ？」

「……、」



草間さんは、饒舌なその男をキッと睨みつける。

見世物としての私の役割は一時終えたのか、雑に髪の毛を手放されてべしゃりと床に落ちる。

それにしても頭からの出血は未だ止まっていないのか、流れる血が目に入りそうだ。

草間さんは足元に置かれた書類を怖い顔で読み進めている。その間、私は自分の短刀の行方を探してみたけれど、どうやら今見える場所にはないようだった。



「……その会社と契約解消を取り消すことで、うちの会社に多少なりとも利益があるのならば、考えもしたが。…この会社は、僕の会社と契約を打ち切らなくとも潰れることは一目瞭然だった。だから打ち切った。つまり取り消すことはしない」



どころかここの社長とは、そもそも馬が合わなかったしね。と続ける草間さんは眉を顰め、渋い顔をしている。



「元々借金も抱え込んでいたようだし、遠回しに金を貸してくれと何度もせがまれたことがある。そんな会社と、もう一度契約を結ぶことになんの利益があると？」

「ほー、アンタの返事はそうって訳だ。」



突如、腹部に鈍痛がして盛大に噎せた。

その場で咳き込んでいると、さらに鈍痛が襲ってくる。────傍に立つ男に、蹴られているのだと気づいた。



「！？ やめろ！！その人に手を出すな！！」

「悪いねェ、俺らはアンタからのNOなんざ受け付けてねェんだわ。必要なのはYESのサインだけ。わかる？」



背中を踏みつけられ、グリグリと体重をかけられる。

げほげほと咳き込み続けて呼吸がしづらい。いつしか吐き出すものの中に血液が混じり始めていた。



「アンタがYESを示さないと、カワイイお嬢ちゃんがズタボロにされちまうけど、良いの？」

「ッ…！！」



歯を噛み締めて、何よりも辛そうにこちらを見る草間さんの視線を感じる。



「わかった、わかったから、サインするから、」

「草間さん！！！」



はあ、はあ、と荒い息を何とか隠して、叫ぶ。

びくり、と草間さんは震えたようだった。



「そんな脅しに、乗らなくて、大丈夫です……私は、大丈夫ですから、」



苦し紛れに浮かべた笑顔を、草間さんはどう受け取ったのだろうか。

泣きそうな顔は、彼に似合わずカッコ悪い。

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