76.きっと胸焼けを起こすから ページ26
「お邪魔にならないようにしますから」
『駄目です。僕は貴女がいるというだけで集中なんて出来ない。仕事なんて放り出して、貴女と話すことを優先してしまうんですから』
正直侮っていた。
びっくりするくらい草間さんは強情で、なかなか易易と話を進めることが出来ない。
瞬きする間に負けじと次の手を考える。
「…でしたら、これはどうですか、草間さん。私と会うことでお仕事の休憩にすればいいんです。」
『………それなら。』
やっと納得してくれたことに、ほっと一息つく。これでようやく話が進む。
しかし電話の向こうの草間さんは、未だ不服そうな声で続ける。
『けれど本当に僕はお見苦しい姿ですよ、それでもいいんですか』
「いいんです。もし宜しければ、休憩中の草間さんに何かしてあげられるかもしれませんし」
『ほう、惚れた女性が僕のために何かしてくれる、と。僕は幸せ者ですね』
うぐ、と言葉を詰まらせる。
これが皮肉なのか本心なのか、分かりにくいところが草間さんの取っ付き難いところでもある。
「……ハードルを上げるのはやめてください。大したことなんて出来ません」
『ハードルだなんてとんでもない、僕の本心を口に出したまでです』
「…ともかく、今回は私の方から出向きますから。余計なお迎え等は不必要ですからね」
『はいはい』
何が"はいはい"だ、と文句のひとつも言いたくなる。
「いつが1番都合が良いかと、どこにいらっしゃるのかを教えて下さい。それから何か休憩になるような、お菓子でも持って行きますね」
『お菓子なんて。貴女さえ居れば他に甘いものなんて要らないですよ、僕は』
「……どうしてそうも簡単に、歯の浮くような台詞を言えるんでしょうね、草間さんは」
『褒め言葉として受け取っておきますね』
にっこり、と、顔が見えていないはずなのに、笑みを浮かべた草間さんが頭に過ぎる。
もちろん私の言葉は皮肉だったけれど、皮肉として受け取る草間さんではなかった。
『……あ、菓子と言えばなんですけれど、Aさん』
「何ですか?」
『これは伏線でも振りでも何でもないことを前提に聞いて欲しいんですが、』
「? はい」
『僕は甘すぎるものはあまり好まないんです。貰う立場なのに我儘ですみません』
彼自身が甘すぎる存在なのに、甘すぎるものが苦手だなんて、なんて、皮肉なんだろう。
「……同族嫌悪ですか?」
『はい?』
「冗談ですよ」
思わず笑ってしまった。
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乙愛 - 吉沢亮さん、良すぎですよね……。ほんと、沖田さん…。現在1番好きな役者さんです。 (2019年2月11日 10時) (レス) id: 6dafc5383a (このIDを非表示/違反報告)
乙愛 - お疲れ様でした!最後の写真みてみたいです…/// (2019年2月11日 10時) (レス) id: 6dafc5383a (このIDを非表示/違反報告)
ののこ(プロフ) - 毎回更新を楽しみにしていました。終わってしまって寂しさもありますが、素敵な小説に出会えて良かったです。ありがとうございました! (2019年2月10日 1時) (レス) id: c2027c837f (このIDを非表示/違反報告)
sachoco(プロフ) - とても素敵な作品に出会えて幸せでした。ハッピーエンドでとても嬉しかったですし、完結した寂しさの反動も大きく、それ程この小説にハマっていたのだと思います。本当にお疲れ様でした!(実写版沖田さん…本当に完璧と言わざるを得ない程素敵だと私も思いました!) (2019年2月8日 19時) (レス) id: 6ffe0b9ea7 (このIDを非表示/違反報告)
春先未(プロフ) - お疲れ様でした…本当に面白く更新を楽しみにしていた作品だったので終わってしまい寂しさ半分、素敵な作品と出会えたという幸せな気持ち半分です。とても素敵な作品をありがとうございましたm(_ _)m (2019年2月8日 18時) (レス) id: 948ea5509c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:木ノ嶋 | 作成日時:2018年12月14日 8時