61.変わりたくない、変えたくない ページ11
とうの昔に知っていたし、とうの昔に気づいていた。
認めるのが怖かっただけだった。
冷える空気に鼻の奥がつんと痛む。
吐く息は白く、もう冬だと嫌でも感じさせられた。
────あの後、まるでヒーローのようなタイミングで出くわした草間さんは、私が落ち着くまでずっと背中をさすってくれていたし、なんなら屯所まで送りましょうか、まで言われてしまうくらいだ。
暫くすれば気持ちは落ち着いたので、それは遠慮しておいた。
相変わらず草間さんはいつもの笑顔を潜めて、私の手をぎゅうぎゅうと握っている。
「……こんなに無防備で、此処に来たのが僕じゃなかったらどうするつもりだったんですか」
「それは……、何とかしますよ、これでも真選組の1番隊副隊長を任されてるので」
「それ以前に、貴女は女の子でしょう」
「それ以前に、私はお巡りさんですよ」
ぎゅう、と握る力が強くなる。
何かを逡巡して、言いかけて、やっぱりやめる。それを何度か繰り返して、草間さんはじっと私を見詰めた。
「どうすれば、僕のことを好きになってくれるんですか」
「……、」
「どうしたら、貴女は沖田総悟のことを好きでなくなるんですか」
「………私が沖田さんを好きでなくなることは、ないですよ」
「だったらさっさと僕のことを振るなりなんなりしてくれたらいい。けれど貴女は、僕からのアプローチも、沖田総悟からのラブコールも全部分かって、それでいてそんな風なんでしょう」
「……」
耳に痛すぎる話だ。
なんの間違いもなく、その通りだった。
だから私は最低だった。
「……私は、草間さんとお友達になりたいです。それじゃ、だめですか」
「僕は貴女と友達になりたい訳じゃないですから」
「……そうですか」
誤魔化しても、避けて歩いても、草間さんは真っ直ぐに私目掛けて突撃してくる。
あまりに正面切って来るものだから、怖気付いてしまって。
「Aさんは、友達になれない草間友彦が近くにいるのは嫌ですか」
「…、友達になりたかった草間友彦さんが、友達になりたくないと、言うのなら、それはもうはっきりと、関係を断ち切るのが筋かな、とは…思います、けど」
「だったら今、この場で、関係を断ち切ってください」
はっきりとした意思の固さに怯んでしまう。
────今のままが1番心地よい、だからしがみついている。
沖田さんといい草間さんといい、私は同じことを繰り返している。
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乙愛 - 吉沢亮さん、良すぎですよね……。ほんと、沖田さん…。現在1番好きな役者さんです。 (2019年2月11日 10時) (レス) id: 6dafc5383a (このIDを非表示/違反報告)
乙愛 - お疲れ様でした!最後の写真みてみたいです…/// (2019年2月11日 10時) (レス) id: 6dafc5383a (このIDを非表示/違反報告)
ののこ(プロフ) - 毎回更新を楽しみにしていました。終わってしまって寂しさもありますが、素敵な小説に出会えて良かったです。ありがとうございました! (2019年2月10日 1時) (レス) id: c2027c837f (このIDを非表示/違反報告)
sachoco(プロフ) - とても素敵な作品に出会えて幸せでした。ハッピーエンドでとても嬉しかったですし、完結した寂しさの反動も大きく、それ程この小説にハマっていたのだと思います。本当にお疲れ様でした!(実写版沖田さん…本当に完璧と言わざるを得ない程素敵だと私も思いました!) (2019年2月8日 19時) (レス) id: 6ffe0b9ea7 (このIDを非表示/違反報告)
春先未(プロフ) - お疲れ様でした…本当に面白く更新を楽しみにしていた作品だったので終わってしまい寂しさ半分、素敵な作品と出会えたという幸せな気持ち半分です。とても素敵な作品をありがとうございましたm(_ _)m (2019年2月8日 18時) (レス) id: 948ea5509c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:木ノ嶋 | 作成日時:2018年12月14日 8時