79.誰だって獣 ページ29
どうぞ、とテーブルに置かれたティーカップには、紅茶から湯気がたっている。
対する草間さんはコーヒーのようで、香りがこちらまで流れてくる。
「僕を選ばない貴女を責めるつもりは一切ありませんけれど────それこそ負け犬のようですしね────そんな僕が敵わない、沖田総悟という男が、僕は気になるんですよ」
「気になる、ですか」
口では喋りながら、草間さんの手はバームクーヘンを切り分けている。
「何が貴女をそこまで縛って離さないのか、とか。」
「縛られてるように、見えますか?」
「見えますとも」
「…そうですか」
あながち私の自己評価も間違ってはいないようだ。
分けられたバウムクーヘンを、草間さんが一口食べたのを見計らってから口に運ぶ。
「美味しいですね、これ」
「喜んで頂けて良かったです。これ、以前貰い物で食べたときにすごく美味しかったので、ぜひ草間さんにも食べて貰いたいと思って」
「嬉しい限りですよ、本当に」
紅茶が進む。
分けられたぶんを食べ終えて、一息つく。
「さて、Aさん」
「? 何でしょう」
「あちらがベッドルームですが、如何ですか?」
「は、」
突拍子もなく、いつものにこやかな笑顔でそう言われて、固まる。
草間さんが指さす方の部屋はドアが閉められている。本当にそこがベッドルームなのかはわからない。
「……冗談ですよね」
「僕はいつでも本気ですよ」
「昼寝に付き合って欲しい、とか」
「いい大人の男が、その程度で満足するとでも?」
「…………草間さん、」
咎めるように名を呼んでも、その表情は変わらない。
目を細めて私の方を見ている。
「すみません。貴女の困っている顔を見るのが好きなもので」
「…勘弁してくださいよ」
「けれど冗談では決してありませんからね」
いつだって僕の胸は空いてますから、なんて。
さらりと言われてしまってまた困る。
「好きな人には意地悪したくなるんですよ、男というのは」
「……皆、そうなんですか?」
「さあ。少なくとも、好きな人が僕の前で他の男のことを考えているのは愉快ではないのは確かですが。」
「ええ……」
エスパーですか、あなたは。
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乙愛 - 吉沢亮さん、良すぎですよね……。ほんと、沖田さん…。現在1番好きな役者さんです。 (2019年2月11日 10時) (レス) id: 6dafc5383a (このIDを非表示/違反報告)
乙愛 - お疲れ様でした!最後の写真みてみたいです…/// (2019年2月11日 10時) (レス) id: 6dafc5383a (このIDを非表示/違反報告)
ののこ(プロフ) - 毎回更新を楽しみにしていました。終わってしまって寂しさもありますが、素敵な小説に出会えて良かったです。ありがとうございました! (2019年2月10日 1時) (レス) id: c2027c837f (このIDを非表示/違反報告)
sachoco(プロフ) - とても素敵な作品に出会えて幸せでした。ハッピーエンドでとても嬉しかったですし、完結した寂しさの反動も大きく、それ程この小説にハマっていたのだと思います。本当にお疲れ様でした!(実写版沖田さん…本当に完璧と言わざるを得ない程素敵だと私も思いました!) (2019年2月8日 19時) (レス) id: 6ffe0b9ea7 (このIDを非表示/違反報告)
春先未(プロフ) - お疲れ様でした…本当に面白く更新を楽しみにしていた作品だったので終わってしまい寂しさ半分、素敵な作品と出会えたという幸せな気持ち半分です。とても素敵な作品をありがとうございましたm(_ _)m (2019年2月8日 18時) (レス) id: 948ea5509c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:木ノ嶋 | 作成日時:2018年12月14日 8時