#44 ページ46
────ついに期末テストが終了した。
もう目の前にまで迫っている夏休みを想像しクラスが沸き立っている。テスト返却のことはひとまず横に置いて、どこに行くだとか誰と遊ぶだとかそう言った話が教室中を埋めつくしていた。
とんとん、と肩を叩かれ振り返ると剛が前髪の下から大きな目でこちらを伺っていた。
「どうだった?」
「それなりに。難破くんは?」
「……僕もそれなり、かな」
ここの問題さ、と問題用紙を広げて指さすのでそれを覗き込む。中学のときはまさかこうして剛と勉強の話をするなんて想像も出来なかった。白百合に入って早3ヶ月、経験したことのないことをたくさん経験している。
「数学苦手なんだっけ」
「そう、だね」
「テスト返し楽しみだね。私は数学得意だから難破くんより点数高い自信あるよ」
「……僕より点数高いって言うかさ……」
剛はもごもごと煮え切らない様子で何かを言いたげにしている。「ん?」と尋ねると、複雑そうな顔をして私の目を見るのだった。
「Aちゃんって全然勉強してる感ないのにすっごい頭いいよね?」
「いやー……多分要領が良いだけだと思うよ……」
掲示された期末テストの順位表の前に集まる生徒の間を縫ってそれを眺めていると、深雪ちゃんからそう告げられる。
「……学年1位」
頂上に記された「葛城A」の名。人波に押されよろけていると、咄嗟に誰かに肩を支えられる。お礼を言おうと顔を上げるとそこにいたのは、またしても複雑な表情を浮かべた剛だった。
「……お前中間テストでも学年1位だっただろ」
「そうだっけ……」
他の人には聞こえないくらいのヒソヒソ声で話す。
必死で1位を取ろうとしている訳ではなく、勉強してみたら楽しかったとか、案外私自身の要領が良かったとか、単純に運が良いとか、いろんな要素がたまたまがっちりハマった結果がこれだ。
「俺より点数高い、っつー話じゃねえだろ……」
「で、でも剛も順位上の方じゃん。そう変わんないって」
「……。」
なんだその顔は。何か言ってやりたくて仕方ないのに言葉が出ない、みたいな顔して。私だってあの剛がこんなに勉強できるようになったなんて衝撃なんだよ。
「……次のテスト前に数学教えてあげよっか」
「お前こそ英語教えてやろうか。英語だけは俺の方が点数高えからな」
「よく見てるなー……」
でも、剛と勉強会か。とても新鮮で変な感じで、きっと悪くないに違いない。
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間宮祥太郎好き - 難破剛かっこいい惚れました。しかも今も胸キュンです。ずっと難破剛会いたい、会いたくてしかたないです。大好きです。 (2022年6月16日 22時) (携帯から) (レス) id: 63b7d0fc4e (このIDを非表示/違反報告)
あたりめ - ナンバMG5の難波くんのお話なかったので見てみたら話が面白すぎて引き込まれちゃいました…!🫠間宮祥太朗さんファンなのでありがたいです😭!! (2022年6月16日 21時) (レス) @page38 id: 9f8ceec694 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:木ノ嶋 | 作成日時:2022年5月24日 12時