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「……あ、今朝ぶり」
「……おう」
帰路の途中、今朝公衆トイレ前で別れた伍代とたまたま遭遇した。お互いそれほど会話を交わしたことがない仲だ、どことなく気まずい空気が流れる。
「……そういや、これ知ってるか」
と、伍代がスマホの画面を私に見せる。それを覗き込むと、つい今朝、島崎が睨みつけていたあの紙が映っていた。
「ああ、うん、ちょうど今朝見たとこ」
「知ってたか。市松の、最上っつー2年の頭が特服のこと探してるらしい。本人にも忠告しといたが、どうも分かってんのか分かってねえのか……お前からも口酸っぱく言っといてくれ」
「あー……私が言ってもあんまり意味ないと思うけど」
「幼なじみの言うことなら聞くだろ」
「幼なじみはそこまで万能じゃないよ。難破剛ってそういうヤツだから私が言ったところで、だと思うけどな。……てか私の話、剛から聞いてんだ?」
じと、と見つめると伍代はバツが悪そうに頭を搔く。
「……悪ぃ、難破とどういう関係なのかってだけ聞いときたかったんがあいつが聞いてねえことまで喋るから……」
「何それ。私は伍代のこと、お母さんが伍代里美ってこととお袋の味なんてもう忘れちゃったことしか知らないんだけど。不公平だから伍代のことも教えて。はい、あなたのお名前は?」
握りこぶしをマイクに見立てて伍代の口元に寄せると、伍代は目をぱちぱちとさせて、それから吹き出して笑った。
「お前……なんか変わってんな」
「ここで吹き出した伍代の方が変わってる」
何がツボだったのか、それから伍代はくつくつと笑い続けている。クールそうに見えるのに案外笑うんだ。つか笑顔可愛いな。よく見りゃキレーなツラしてるし。
「……いつまで笑ってんだよ!」
いつしか2人の間に流れていた気まずい空気は、とうに何処かへと吹き飛んでいた。もしかしたら伍代の笑い声に流されていったのかもしれない。あまりに伍代が笑うから、私も釣られて少し笑ってしまった。
────その頃、深雪ちゃんが特服の正体を勘づいてしまったことなんて、気づきもせずに。
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間宮祥太郎好き - 難破剛かっこいい惚れました。しかも今も胸キュンです。ずっと難破剛会いたい、会いたくてしかたないです。大好きです。 (2022年6月16日 22時) (携帯から) (レス) id: 63b7d0fc4e (このIDを非表示/違反報告)
あたりめ - ナンバMG5の難波くんのお話なかったので見てみたら話が面白すぎて引き込まれちゃいました…!🫠間宮祥太朗さんファンなのでありがたいです😭!! (2022年6月16日 21時) (レス) @page38 id: 9f8ceec694 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:木ノ嶋 | 作成日時:2022年5月24日 12時