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────翌日登校すると、黒板に描かれた桜の木を模した自己紹介カードは欠けることなくすべてそこに貼ってあった。
ぽっかりと穴が空いていたところのカードは握り潰したのであろう跡が残っている。この皺に彼の葛藤と覚悟が見えた気がして、唇を固く引き結んで自分の席へとついた。
「おはようAちゃん」
「おはよう深雪ちゃん。難破くんもおはよう」
「おはよう葛城さん」
清々しくすっきりした顔をしている剛を見て表情が緩む。最近の浮かない顔はどうやら昨日の件で払拭できたようである。
私は小さくちょいちょいと手招きして、剛に身を乗り出させた。他の誰にも聞こえないようにその耳元に口を寄せ囁く。
「……特服のこと、話してもらうから」
「あーー……、放課後、な?」
白百合高校の制服を身にまとっているとき特有の、険の取れた優しい表情の困り顔。案外私はその顔が嫌いじゃない。
「えっ」
「おう。待たせたな」
黒髪学ラン大人しそうな男が、公衆便所から入って出てきたら見慣れた金髪ツンツン頭になっていた。間違いなくあの乱闘のときに見た特服その人である。
────放課後が訪れ、私たちは家の方面が一緒だということで共に帰路につくことにした。
美雪ちゃんや巻ちゃん、島崎に別れを告げ2人だけになってからいよいよ本題が打ち明けられると思ったが、剛に振られる話題はどれも他愛のない雑談ばかりだった。まあ確かにシャバい姿で特服の話をするのはなかなかにリスキーだろう。
とある公衆トイレの前に来ると「ちょっと待ってて」と言い残しそのトイレの中へと消えてしまった。どうせもう家に帰るだけなんだし、家で用を足せばいいんじゃね?と思っていた私の前に再度現れたのが、特攻服だったというわけだ。
「あ、この特服はかーちゃんが買ってくれたやつでよ、気合い入ってんだろ」
「そうだけど、私が今聞きたいのはそれじゃない」
「歩きながらでもいいか?どうせウチの前通り道だろ」
白百合の制服に瓶底メガネという、明らかに地味で陰で芋な私と、ド派手なヤンキーの剛が並んで歩いている様は、ふとカーブミラーに映った自分たちの姿を見たときにあまりに異質だと気づいた。思えばヒソヒソと訝しげな視線を歩行者たちから向けられていたかもしれない。
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間宮祥太郎好き - 難破剛かっこいい惚れました。しかも今も胸キュンです。ずっと難破剛会いたい、会いたくてしかたないです。大好きです。 (2022年6月16日 22時) (携帯から) (レス) id: 63b7d0fc4e (このIDを非表示/違反報告)
あたりめ - ナンバMG5の難波くんのお話なかったので見てみたら話が面白すぎて引き込まれちゃいました…!🫠間宮祥太朗さんファンなのでありがたいです😭!! (2022年6月16日 21時) (レス) @page38 id: 9f8ceec694 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:木ノ嶋 | 作成日時:2022年5月24日 12時