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One ページ6

地下室へと降りる。ひとつの扉。分厚い特注。指紋認証。


重厚な機械音がして施錠が解かれる。複雑な仕組みの鍵がひとつひとつ外される。きっかり1秒。中に入る。そこに命が息づいていることに今日も安堵する。




不自然な内装。ワンフロアぶち抜いただだっ広い空間。妙に快適な空調。一面の白。白。

キングサイズのベッド。熱帯魚の舞う大きな水槽。猫足バスタブ。地球儀。虎の剥製。砂時計。ロッキングチェア。燭台。ボトルシップ。洋書の詰まった本棚。

そのどれもが白で統一されているのに、どこかアンバランスな部屋。箱庭というには色味のない。鳥籠というには隙間もない。閉鎖的で排他的。明るい地獄。


――待ってたよ。


穏やかな微笑を携えて俺を見やる。いつも通り。扉を開けた正面の椅子に彼は大体座っている。ゆらゆら。音も立てずに重心を少し弄ぶ。いつもそこにいるのか、俺が来るときだけそこに座るのかは知らない。来る時間は決まっていないし教えてもいない。出来るならずっとここにいたい。




――本棚にあるの、全部読んじゃった。



また持ってくる。これが精一杯の返事。それくらいは聞いてやらなくてはと思う。


この地下室を設ける以前、翔が初めてうちに来たとき。俺はお前を鎖で繋いだね。手首が擦れないように細心の注意を払いながら、それでも止めなかった。こんなものなくたって逃げないとお前は言ったろう。お前が逃げるとも思っちゃいない。ただ怖いんだ。お前が人目につくことが。お前が盗られてしまいそうで。


契約が終わるあの日、その手枷は外してやった。だけれども、お前はさらに自由を失った。代わりに与えられた窓のない部屋。遮音性に優れたトイレも風呂も仕切りのない異様な部屋。それでもお前は何も言わず収監された。仕方がないな、そんな顔をして。



この部屋には時計がない。当然カレンダーもない。もうどれくらい経ったかなんて知る由もない。知らなくていい。余計なことは気にしちゃいけない。












「それが、いないんです」

「今日あなた方が来ることは伝えていたはずなんですが」

「ええ」

「本当、ついさっきまではうちにいたんですけど」



「そうですか」

「はい」



「わかりました」


「こちらも見つけたら連絡しますね」





「それでは」





「…素敵な贈り物を、ありがとうございます」

「いえ、なんでもありません」

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Mia.(プロフ) - きよさん» きよさん、コメントありがとうございます。sygrの山キャンプがあまりにも尊く…、つい書きました。久しぶりの執筆でしたので稚拙なものとなりましたが、あたたかいお言葉本当に嬉しかったです。励みになりました。またいつか更新した際はどうぞ宜しくお願いします。 (2020年9月23日 10時) (レス) id: 0519a4140b (このIDを非表示/違反報告)
きよ(プロフ) - Mia.さん、山コンビのキャンプ尊いです 。翔くんもキャンプにはまりそうでしたよね。でもやっぱり、二人だから楽しかったし、やりたくなったんですよね!ドンピシャなお話しありがとうございました。 (2020年9月20日 22時) (レス) id: ae2dee5c90 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Mia. | 作成日時:2019年1月23日 18時

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