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拘泥というものがなかった。
創造は好きでそういった感性に関する細かなこだわりはあったけど、それでも何かひとつと引き換えならば容易に捨てることは出来た。ただひとつを手にしていれば、自分を殺すことには些かもならなかった。
それを腕に収めたとき、死んでもいいとさえ思った。形容し難い感情におそわれ、溢れ、ほうと溜め息をつくことも落涙することも身体は忘れていた。ただしばらく、声が出なかった。何と声をかけたら良いか最適解が分からなかった。
それは翔といった。綺麗な顔をした男だった。背は自分よりも高いのに、足腰は細く色白で撫でた肩が誘うように覗かせる。血のように鮮やかな唇。一方で全てをも飲み込む闇色の瞳。男は壮絶な殺気と色気を放っていた。
期限付きの時間だった。有限を試されているようで、世の理はそんな俺を嗤っていた。無論手放せるはずなどなかった。その日から、彼が己のすべてとなった。彼以外何もなくなった。そしてあらゆるものが彼へと直結した。
他に必要なかった。
払底を齎す天使のような悪魔。
――逃げないよ。
困ったように微笑んで。それから手首をひょいと上げる。
――こんなのなくたって。
ジャラ、と無機質な重さが部屋に響く。嫌に乾いた空間。こちらが黙っているのを然して留めもせず尚も首をかしげる。探っているように。賺すように。本意かはわからない。大切にしたいのに、本意など置き去りになる。眠っていた自我がむくむくと顕になるのがわかって。
逃げられたら、二度と戻ってこないような気がした。
自分とほとんど変わらぬ年齢の男を幽閉していることに時おり身震いしたくなる。だが冷静になっては駄目だ。良心に負けそうになる。理性にはあっさり負けたけど。でも中途半端は好きじゃない。やると決めたら1億年でも突き通す。
この為に暮らしを変えた。生活を棄てた。それで良かった。悔いはない。そうして今がある。
幸せというには綺麗じゃない。けど最も近しい感情にも思える。
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Mia.(プロフ) - きよさん» きよさん、コメントありがとうございます。sygrの山キャンプがあまりにも尊く…、つい書きました。久しぶりの執筆でしたので稚拙なものとなりましたが、あたたかいお言葉本当に嬉しかったです。励みになりました。またいつか更新した際はどうぞ宜しくお願いします。 (2020年9月23日 10時) (
レス) id: 0519a4140b (このIDを非表示/違反報告)
きよ(プロフ) - Mia.さん、山コンビのキャンプ尊いです 。翔くんもキャンプにはまりそうでしたよね。でもやっぱり、二人だから楽しかったし、やりたくなったんですよね！ドンピシャなお話しありがとうございました。 (2020年9月20日 22時) (レス) id: ae2dee5c90 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Mia. | 作成日時：2019年1月23日 18時
