つなぐ手と手 6 (ページ18)

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｢うん？｣

八乙女はなんだか嫌な気配がし何度も振り返る。

｢誰も居ないって。｣

｢それは分かってるけど……｣

伊野尾と八乙女が歩道橋の階段を下りようとしたその時だった。

｢えっ？｣

伊野尾は突然階段から落ちた。

その瞬間八乙女は後ろを振り返った。

｢愛理……ちゃん。｣

一ノ瀬は伊野尾を押したのだ。

｢いっ、いったぁーい。｣

伊野尾はお腹を抱え苦しみ始めた。

｢いのちゃん。｣

八乙女が伊野尾の元へ駆け寄ろうと階段を下りようとすると一ノ瀬は八乙女の腕を掴み持っていたカッターを八乙女の首に近づけ

｢私のこと話したら光くんも含め宏太以外のメンバー全員殺すから。｣

と言って逃げるように去って行った。

八乙女は一瞬凍りつき動けなかったがすぐに伊野尾の元に行った。

｢いのちゃん大丈夫。しっかりして。｣

伊野尾は出血していた。

八乙女はすぐに救急車を呼びその後携帯の電話帳の1番最初に名前があった“圭人”と書かれた岡本の連絡先から電話を選び電話した。

｢圭人。｣

今にも泣きそうな八乙女の声に岡本は動揺した。

｢光くんどうしたの？｣

｢今どこ？｣

｢山ちゃんと彩星と上智大学近くのカフェに来てるけど。｣

｢なんで千代田区に居るんだよ。車？｣

｢違うけど。｣

｢いのちゃんが……いのちゃんが……｣

とうとう泣き出してしまった八乙女。

そんな八乙女の横で伊野尾は痛そうにしている。

そのうち救急車がやって来た。

｢救急車？｣

電話越しに聞こえる大きな救急車のサイレンに岡本の心はバクバクしていた。