つなぐ手と手 3 (ページ5)

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｢ただいま。｣
｢おかえり。今知念から電話があった。なんか涼介の様子が変だったって。｣
｢気になるなら会いに行けばいいじゃん。｣
｢昨日の今日だよ。｣
｢じゃあ電話でもLINEでもすればいいじゃん。｣
｢…………｣
｢面倒くさいなぁ。｣
｢ごめん。｣
｢ちょっと付き合って。｣
伊野尾は有岡を連れ出した。
｢オレここ行きたかったんだよね。｣
伊野尾はパンケーキの店へ有岡を連れて入った。
｢大ちゃん甘いもの好きじゃん。オレも甘いもの食べたいし。｣
伊野尾はメニュー表を見ると直ぐにスタンダードのパンケーキに決めた。
｢大ちゃんは？｣
｢この生クリーム乗ったのにする。｣
パンケーキを注文すると伊野尾は珍しく愚痴を零し始めた。
｢本当は泣きたくてたまらない。でも薮泣き虫だから。薮の泣くの見たくない。｣
｢それといのちゃんが泣かないのと関係あんの？｣
｢初めて薮と会った時薮わんわん泣いてたんだ。｣
｢オーディションがイヤででしょ？｣
｢その後も事ある度薮は楽屋で泣くんだ。『今日の撮影ヤダ』とか『ロケやりたくない』とか。｣
｢へぇー薮ちゃんが。｣
｢しかもいつでもオレの前だけみたいなんだよね。光に話したことあったけど光、そんなことないって言うんだ。｣
｢うん。｣
｢だから、オレは絶対に泣いちゃいけない。薮が泣きたい時、不安な時オレが泣いてたらダメだと思わない？｣
伊野尾の話しを聞いた有岡は
｢涼介そっくり。｣
と笑った。
｢そっくりって？｣
｢やり方は違うけど、2人とも優し過ぎだね。自分犠牲にしても相手を思う所。｣
｢…………そうかもしれない。｣
そんな話しをしてると注文したパンケーキが運ばれて来た。
｢たまにはなにもかも忘れて息抜きもいいじゃん。｣
｢そうだね。｣
2人はいろいろ話しながらパンケーキを食べた。
だが、この時伊野尾の口から山田と有岡の離婚についての話しは何もなかった。