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まさか鼻つままれて起こされるとは
考えてもいなくて。
とっさの出来事に俺は何もできなかった。
ぼんっと白虎に変わる自分の姿。
悲鳴、悲鳴、悲鳴。
もうさっきまでの楽しい時間はどこにもない。
一緒に遊んでいた友達が恐怖に顔を歪めながら
俺のもとから逃げていく中、
俺は一人でぼんやりとその場に立ちすくんでいた。
もう終わりだ。
何もかも。
しばらく何も考えられなくて
そのまま突っ立っていたけど
不意に無性に寂しくなって気付けば
涙が流れていた。
”白い虎が公園にいる“
その噂は瞬く間に広まって
それを聞いた翔さんがすぐに来てくれた。
翔さんが来てくれた時には
もう俺は元の姿に戻っていて。
その場から動けなくて
ただただ座り込んでいた。
「ニノ」
そう俺を呼んだあの時の翔さんの表情は
今でも忘れられない。
涙が出ているのにすら気付かないほど
放心しきっていた俺を見て、
まるで泣きそうな顔で俺よりも苦しそうに顔をくしゃくしゃにしていた。
今考えれば翔さんだって
この時は子供だったんだから
いっぱい甘えたい時期だったはずなのに。
翔さんはこの頃からもうすでに
俺らの”お兄ちゃん“だった。
そこから後はあまり記憶にないけど
確か翔さんと家に帰って。
大野さんが激怒して。
俺の代わりに翔さんが傷ついた。
そして大野さんの命令で
その公園にいた人全員の
俺に関する記憶を消して。
俺はその小学校を転校した。
今でも考えてしまうんだ。
あの時俺が寝たりなんてしなかったら。
俺は幸せでいれたのかなってね。
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作者名：智帆
| 作成日時：2013年6月22日 9時
