Want to -今日をどう生きようか- (ページ45)

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ー家ー

「おかえりなさい、あなた
　会食はどうでした？」

「ああ、少しバーで飲むくらい話が弾んだよ」

「Aは？失礼のないようにお話しできたの？」

「はい」

「このまま婚約の話を進める
　手配はおまえに段取りを任せる」

「はい、承知しました」

「お父様、お母様、」

「なんだ」

「私が女だから会社を継げないことも、
　良家に嫁いで企業間の友好化による利益でしか会社に貢献できなことも
　お父様の決定に拒否権がないことも」

「そうだ、わかってるじゃないか」

「わかっています、でも！
　自由になることはかないませんか？」

「何を言って、」

「他の企業に就職したいなんてわがままは言いません、
　系列会社に入社しろでも、会社を大きくするために
　何でも言うことを聞きます！
　だから、誰と結婚するかだけは、
　自分で決めさせてください、
　お願いします！」

玄関のタイルで土下座をする

「A…」

「…ふざけるな！」

ああ、だめだった

「なんのためにお前を育てたと思ってる！
　ソジュンが死んで、俺はもう会社のトップに立つ見込みはなくなった
　それでもお前が大手の結婚すれば、返り咲ける可能性が少しでもあるから
　お前に金をかけたんだ！
　女なんてしょせん子供ができれば仕事はできない
　どんなスキルがあったって意味がないんだ！
　政略的結婚に使えない娘など価値がない！」

「あなた…」

「今すぐに婚約の話を進める
　発表当日まで閉じ込めておけ」

「お父様待ってください！お願いします！」

父の腕にしがみつく

「うるさい！」

ゴンッ

「あなた！」

「っ！」

「うっ…」

「A！
　あなた！救急車！」

「あ、ああ、いや」

「なにやってるのよ！
　A！A！」

痛ってぇ

父に振り払われて突き飛ばされた拍子に玄関の棚の角に頭をぶつけたらしい
一瞬意識が飛んでた
右手で頭を触ると血が手につく
ああ、血が出ているなら大丈夫なんだっけ
なんてなぜか冷静に思う

「お母様、」

「A！大丈夫？！しっかりして！」

「ばいばい」

「え…」

母の手を振り払い何とか立ち上がって
玄関のドアに手をかける

「おい！」

「A！」

「…さよなら」

痛む頭を押さえながら20年過ごした家を出た