その恋の裏側を、きっとキミは知らない (ページ5)

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『翔ちゃんさぁ…』

プフフ、と口を手で抑えて
今にも溢れそうな笑いを必死に堪えるニノ。

『言っちゃえば？恥ずかしくて面と向かって話せませんって』

「無理に決まってんだろ…」

『ヘタレすぎるー』

そりゃ俺だって！

カッコよく手だって繋ぎたいし
ふつーに話したいわ！

でもAに俺がこんなにも
ヘタレだって知られたらきっと引かれる。

別れてほしいって言われるかもしれない。

あの優しい目で『せんぱい』って
言ってくれなくなるかもしれない。

そんなの。耐えられない。

朝のSHRが終わって休憩時間。

1限目の英語の道具を取りに
廊下にあるロッカーへ向かう。

教室の入口を出てすぐなのに
なぜかいつも以上に通行する生徒が多くて
中々横切れない。

なんでこんなに混んでんだ？

行き交う顔を見るがあまり面識がないメンツ。

ちらりと足元を見ると
靴のラインが赤…ってことは2年？

3年の階に2年がいるってことは移動教室か。

よく見れば隣の美術室にゾロゾロと入っていく。

しかたねぇ。
この集団が落ち着いたら取ればいいか。

くるり、背中を翻した。

『ねぇA！櫻井先輩いるかもよ！』

ドキン！と心臓が一拍高鳴る。

やっべ！！

反射的に慌ててバタバタと教室の中に入って
ドアに寄りかかる。

声はAのものではないけど、
〝A〟という名前はいくら騒がしい中でも
聞き取ってしまう俺は天才耳らしい。

『ちょっと教室覗いてみようよ！』

『いやいや無理無理！3年生の教室だよ！？』

『えー、つまんなーい』

『もう！他人事だと思って！』

どんどん近づいてくる俺の耳を擽る声。

2年、美術室、移動教室…

なるほど。Aは芸術選択を美術にしたのか。

だからこの前美術室の場所を聞いてきたわけね。

無意識に隠れてしまった行動に
情けないと思いつつ、早くなった心臓を
深呼吸して落ち着かせる。

ドアの真後ろ。

廊下から見えないのは分かっているけど
口を手で塞いで息を潜めた。

ドア付近の奴らが不審な行動をする俺を見て
『どうした？さく…』と名前を呼ぼうとしたから
掴みかかる勢いで「シー！！！」っと
喋るなオーラを出す。

おぉ…と若干引き気味にされたけどまぁいい。
それよりも奥でニヤニヤしながら俺を見てる
ニノがムカつく。