その恋の裏側を、きっとキミは知らない (ページ4)

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『はよーっす』

「おはよ」

毎日の如く始業時間1分前に
焦りもせず教室に入ってくるニノ。

でっかいあくびをしながら
俺の隣の椅子を引く。

ケツポケットに入ってたスマホを
無造作に取り出すと、
あ、と何かを思い出したかのような声を出して
ニヤリとこちらを見た。

あー、嫌な予感。

『ねぇしょーちゃーん』

「数学の課題は見せねぇぞ」

『え、そんなこと言っていいの？』

「は？」

『Aちゃんの最近の悩みがさー、翔ちゃん関係でー』

「……」

スマホをふるふる振って悪ガキの笑み。

チャイムが鳴る。
うちの担任はいつも来るのが遅い。

『世の中ギブアンドテイクじゃん？でも翔ちゃんがテイクしてくれなきゃ…』

「さぁどんどん写しなさい」

『単純(笑)』

借りマース！と差し出した数学ノートを広げて
カチカチとシャーペンを鳴らす。

器用にクルンッと一度回してから
自分のノートと俺のノートを何度も往復させて
ガリガリとダルそうに写し始めた。

「…んで？」

『ん？…あぁ、Aちゃんね、〝先輩、私の顔が嫌いなんでしょうか？〟って言っててー』

「………はぁ！？」

渾身のはぁ！？が飛び出た。
生まれて初めて全力のはぁ！？を言ったと思う。

もう何故ニノがAと
こんな話をしてるんだという疑問なんか
完全にすっっっぽり抜けた。

「いや…どゆこと？」

『〝先輩は大人の綺麗な人がいいんでしょうか？私みたいな童顔嫌なんでしょうか？〟だって。かっわいー悩みー』

ほら、とこっちにスマホの画面を見せてくる。

確かに見慣れたアイコンに
〝A〟という相手の名前。
白い引き出しから今ニノが言った言葉の
一言一句が書いてある。

「…なんでニノはAの連絡先知ってるわけ」

『おっと、こえーよ彼氏くん』

完全にふざけてる。
けどそれでも憎めないのが
ニノの生まれ持ったなにかなんだろうな。

ていうか。なんだよその悩み。

俺がAの顔を見れないってこと
あいつは気づいてたのかよ。

…まぁ、そりゃわかるか。