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大橋side
「…なんか隣、騒がしない？」
「ですね。ちょっと見てきますー」
今日は夜勤の担当で、看護師さんとふたり、平和やねーなんてゆっくり過ごしてた。
やけど廊下を挟んだ向こう側、呼吸器のナースステーションが何やら騒がしくて。首を伸ばして見ていたら看護師が様子見に行ってくれて、かと思いきや小走りで戻ってくる。
「大橋先生！あの、長尾先生って」
「……謙杜？謙杜がどうかしたん」
「喘息の発作が大きいみたいで、でも担当医の方がいらっしゃらないとかで…」
「…っ、ごめん、ちょっと離れてもいい？なんかあったらすぐ呼んで！！」
嫌な予感がして、呼吸器の病棟に走る。謙杜の病室には何人も医者と看護師が集まってたけど、謙杜の苦しげな呼吸だけ、嫌に目立って聞こえてきた。
「あの、すいません！小児科の大橋です。えっと長尾の友人で…」
「あー大橋先生…！今やっと落ち着いたところなんですが…」
「謙杜？謙杜？…しんどかったなぁ、がんばったなぁ」
「…っ、はぁ、はぁっ…！…お、はしくぅ…？」
「そやで。苦しいやろ、あんま話さんでええよ。いっぱい涙さん出たなぁ、もう大丈夫やからなぁ」
「ふぅ、ぅん…っ、…はぁー…っ」
気を遣ってくれたのか、気づくと部屋には俺と謙杜の2人きりやった。
発作は治まったとはいえいまだに激しく胸は上下しているし、鼻から伸びたカニューレも痛々しい。何より、小さな顔には涙がいっぱいで。
「んぐっ、…はぁ、おはしく……しんどかった、のぉ」
「んーそっかそっか。…ありゃ謙杜、ちょっとお熱もありそうやんね」
「んぅー！ないのぉ、おなつなぃ……」
「え〜そうなん？まぁええか、胸は痛くない？」
「…っ、ちょっと、いたい…」
「そっか。…あー、いじらんの」
子供みたいに駄々こねたと思えば、急に医者の顔して点滴いじろうとしてみたり。それでもやっぱり苦しそうなのは、発熱のせいやろか。
「けーんと、大橋くんそろそろ行かなあかんかも。お胸さすってあげるから、ねんねしよな」
「…ん、いやぁ…」
「大丈夫よ、なんかあったらまた来たるから。俺今日夜勤やねん」
「やきん……っ、はぁ、ごめ、んなさい…」
「んー、ええのええの。俺が来たくて来ただけやねん」
あちゃ、夜勤なんて言わん方が良かったかな。
謙杜は申し訳なさそうに眉を下げてしまったけど、胸をさすってあげていたら落ち着いたみたい。穏やかな寝息に安心して、そっと病室を後にした。
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作者名：柚羽 | 作成日時：2023年10月17日 16時
