・ ページ18
謙杜side
「………っあ、…」
いつの間にか意識がどっか行ってて、下校を告げるチャイムの音にようやく目を覚ます。床に置いたままのスマホの画面に触れれば、もう18時を回っていた。やばい、校門閉まってまう。
皮肉なことに、さっきまでびしょ濡れやった髪はほとんど乾いてて、でもその分体温が持ってかれたんか体がガタガタと震えてくるほどで。
「…、っもう、いたぃ…」
慌てて荷物をまとめて立ち上がって、なんとか力を込めて扉を押せば、出られるくらいの隙間はできた。そこから抜け出して暗い廊下を歩くけど、ガンガンと止まない頭痛と、フラフラと覚束ない足元のせいで真っ直ぐ歩くことすらできん。
何度もしゃがみこみたくなるのを我慢して、ようやく校庭に出ることができて。まだ開いていた校門に安心して吐いた息は、震えるほどの寒さに反してびっくりするくらい熱かった。
「…っ、しん、どい…」
人通りもそれなりにあるし街灯だってついとるけど、日はほとんど落ちているのが不幸中の幸いやった。少しは乾いたとはいえ濡れた服で、ふらふら倒れそうになりながら歩いてる高校生、怖すぎやろ。
とにかく家に帰ろう。電車も3駅だけやし。この時間って混んでるんかな、わかんないな。こんなに体調悪そうなの乗ってきたらさすがに席譲ってくれるんちゃうかな。
…てかその前に、駅まで辿り着けるかな。
「、むり、かも…」
さっきまでわずかに揺れていただけの視界も、だんだんぼやけてきたり、急にふっと見えなくなったり。こわくなって大きく深呼吸をしてみたけどなんも変わらんくて、歩くのも辛いくらいにグラグラと揺れてきて。
地震なわけちゃうよな。周りは普通やし、俺がおかしいんよな多分。あかん、こんなん経験したことない。どうしよ。
もういいや、うずくまってまおうかな。誰か助けてくれるかもせえへんし。…いや、迷惑か。でももう、限界やねん……。
「…っ、ぁ、おにーちゃ…」
諦めかけたその時、前を見てなかったせいでバス停の表示にぶつかりそうになって。やば、と思ったそこにはおにーちゃんの病院の名前が書いてあって、そうや、ここ、病院や…って。
今朝のことなんて忘れて、もうおにーちゃんに縋るしかない、って思った。やから、最後の気力を振り絞って病院の入り口まで行ったのに。
「……っなんで…」
非情にも診療時間はもう過ぎてて。
開かない自動ドアの前で、とうとうしゃがみこんでしまった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 239人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
柚羽(プロフ) - ちゅきちゅきさん» ありがとうございます！そう言っていただけてとても嬉しいです🥹💛 (2022年12月24日 10時) (
レス) id: 9997f70d34 (このIDを非表示/違反報告)
ちゅきちゅき(プロフ) - 各コンビとの短編集？天最高です！毎日の楽しみになりました😍 (2022年12月23日 13時) (レス) id: 1b2f475238 (このIDを非表示/違反報告)
柚羽(プロフ) - Rioさん» ありがとうございます…！🥺お返事できておらずごめんなさい…！夕暮れさんとても人気なので近いうちにまた書くと思いますー！！🫧 (2022年12月15日 0時) (レス) @page39 id: 9997f70d34 (このIDを非表示/違反報告)
Rio(プロフ) - 主様のお話大好きで何回も読んじゃいます！！また夕暮れのお話待ってます🥺🥺 (2022年11月26日 20時) (レス) @page36 id: 9d6c92ab72 (このIDを非表示/違反報告)
柚羽(プロフ) - おもち。さん» ありがとうございます🥹おもち。さんも続編公開おめでとうございます！楽しみにしてます♡ (2022年10月13日 23時) (レス) @page5 id: 9997f70d34 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：柚羽 | 作成日時：2022年10月13日 18時
