７BAKERY

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〈過去編〉


緑side









俺はホンマの家族を知らない






ホンマの名前も知らない









公園でダンボールに入れられ泣いている赤ちゃん







それが俺









生後３ヶ月程度で







夏から秋へと代わろうとしている寒空の中








俺の小さな命は救われた









俺を救ってくれたのは紛れもなく淳兄と照史くん








「今にも消えてしまいそうなか細い声で泣いてたで」






淳兄がそう教えてくれた









“智洋”という名前も死んだオトンが付けてくれて







小学校に上がるまで俺が捨て子だったことも






命の恩人が淳兄と照史くんだということもしらんかった









俺を産んでくれた人は






一体何をしてるんやろうか？








生きてんのかな？






髪は長いのかな？






スタイルはいいのかな？






どんな顔を





どんな声をしてるのかな








俺を捨てた後悔してるんやろか









何もわからへん






家族って何やろうなって






今でも時々考えてまう









他の皆にはいくら嫌いでもホンマの産みの親がいて





顔だって声だって知ってるのに







俺は何も知らへんし





調べようもない









オカンって優しいん？





オトンって一緒に遊んでくれたりするん？









身体の弱さとかって遺伝するんかな？





俺、割と身体弱いんやけど





しょっちゅう風邪ひくし、貧血と喘息あるし









もしかして、オカンも身体が弱いんかな









こうやって妄想しか出来ひん








今の家族は楽しいし






ホンマに幸せやけど









やっぱり1回でいいから本物のオカンに、オトンに会ってみたいんや









やって、今俺がこんな素敵な家族と一緒に暮らせているのは








産んでくれたオカンとオトンのおかげやろ？









捨てた事実は変えられへんけど







俺は一言だけ







「産んでくれてありがとう」






そう伝えたい









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