あなたが私を知っているのなら[のんびり更新] (ページ22)

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ふたりで同時に缶を傾けて
喉を潤した。

『んーうんまい。』

｢やっぱ普通に飲むんだ。｣

『なんだよそれ。』

笑いながらグビグビと
ビールを飲むおーちゃんは
なんか新鮮だった。

でも、さっちゃんはお酒が好きで
ふたりでよく飲んでたから
その時を思い出しそうにもなった。

お互い、テンションが上がるわけでもなく
静かに会話をする。

その感じはなんだか似ていた。

私もおーちゃんもかなり飲んで
缶に手を伸ばすまでの
間隔が長くなった頃、

水が飲みたくなり
私はソファから立とうとした。

そうしたら、
少しよろめいておーちゃんの
ビールを持っている腕に
ぶつかってしまった。

その衝撃でおーちゃんの白いTシャツに
ビールが飛び散った。

｢うわ！ごめん！ほんとにごめん！｣

『大丈夫ー』

｢ちょ、Tシャツ脱いで！
すぐ洗わないとシミになるよ！｣

『大丈夫だから。
後で自分でなんとかするから。』

｢いや！ダメ！
すぐやるのが大事なの！｣

『……分かった。』

おーちゃんは下を向いてそう呟くと
ゆっくりとTシャツを脱いだ。

露わになった細い上半身には
一際目立つ、傷があった。

割れた腹筋のそばにある
長くて太い傷。

私はそれをじっと見つめてしまった。

『気になる？』

｢いや…ごめん。｣

『なんで謝んのよ。』

｢こういうのって
あんまり言いたくないのかな
って思って。

私、無理やり脱いでって
言っちゃったから。｣

『いいの。もう。
Aちゃんに隠す必要なくなった。』

｢え…？｣

『これは高校生の時に事故にあって
手術したときの跡。
もう大丈夫なんだけど、
全然消えないの。』

｢そっか…。｣

『急に見たらびっくりするでしょ？
だからあんまり見せたくないの。』

この傷は、さっちゃんにはなかった。