あなたが私を知っているのなら[のんびり更新] (ページ20)

今日:13 hit、昨日:0 hit、合計:14,872 hit

20 ページ20

.

ふたりでガイドブックを読んで、

ちょっと高級なホテルを予約して、

新しい服を買った。

毎日毎日、
楽しみだねぇ
なんて話して。

そして、案外すぐに
楽しみにしていたその日は来た。

家を出る前に何回も
飛行機のチケットを確認した。

ホテルからのメールも
隅から隅まできちんと読んだ。

｢いってきます。｣

小さい声でそう呟いて
私は家を出た。

.

自動ドアを通り抜け外に出ると、
暑い空気が
私たちの肌に触れた。

｢沖縄って感じだね。｣

『あっついなぁ。』

｢ほんとに荷物そんだけで大丈夫なの？｣

『重いのいやじゃん。』

｢車で運ぶんだから関係ないのに。｣

『いいのー』

空港からすぐのレンタカー屋さんで
申し込んでおいたレンタカーを受け取った。

レンタカーを運転するのは私。

おーちゃんは免許を持っていないらしい。

助手席にちょこんと座ったおーちゃんは
私に笑いかけた。

『出発進行？』

｢うん！しゅっぱーつ！｣

アクセルをぎゅっと踏むと、
車はゆっくりと動き出した。

.

ふたりで色んなところに行った。

インドアなはずのおーちゃんも
私の行きたいところに付き合ってくれた。

おーちゃんが行きたがっていた
美術館にも行った。

楽しそうに作品を見つめるその横顔は
可愛くて、ずっと見ていられた。

『俺じゃなくて作品見なさい。』

｢え、あ…いや…恥ずかしい。｣

『恥ずかしいのはこっちだよ？』

｢ご、ごめん…｣

『ふふふ。顔真っ赤。』

おーちゃんと過ごす一瞬一瞬が
かけがえのないものになっていくのが
よく分かった。

そして、そうなるにつれて

さっちゃんへの気持ちが
おーちゃんに向いていった。