あなたが私を知っているのなら[のんびり更新] (ページ16)

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もうかなりバケツに魚が溜まったところで
おーちゃんは立ち上がった。

『そろそろ戻ろっか。』

｢そうだね。｣

『運転してみる？』

｢え！いいの！？する！』

『Aちゃんは言った通りに
ハンドル動かしてくれればいいから。』

そう言っておーちゃんは
ハンドルのすぐ近くにあるアクセルに手をかけた。

『じゃあ、行くか。』

その声を合図に船は震えだした。

まだ明るい空の下、
青い海へと進み出した。

おじいちゃんが漁師だった私は
小さい頃に一度だけ
漁船に乗ったことがある。

あの時の頼もしいおじいちゃんに憧れて
船を運転してみたい
と思っていた。

小さい頃からの小さい夢が
ひとつ叶った。

叶えてくれたのはおーちゃんだった。

10分くらい運転すると、
ここからは俺が
って言って運転席を替わった。

そこから30分くらいで
朝に私たちが出発した小さな港が
見えてきた。

船から降りても
まだ船の中にいるかのように
身体はフワフワしていた。

『え、大丈夫？』

真っ直ぐに歩けずにフラフラしている
私の身体を支えてくれる。

なんの躊躇いもなくそんな行動ができる
おーちゃんに心臓が鼓動を打つ。

『ちょっとこっち。』

おーちゃんは私の手を引っ張り、
防波堤の方へ連れていった。

『こっからは目つぶって。』

私はおーちゃんの言う通りにした。

『はい、座って。』

恐る恐るしゃがみ、
足を前に出して座ってみると
お尻がひんやりとした。

『目開けて。』

ゆっくりと目を開けると、
真っ赤…というより

濃いオレンジ色の太陽が
海に隠れようとしているところだった。

その太陽を反射した水面は
キラキラと輝いていた。