偶然からはじまる恋〜羽生結弦 (ページ10)

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彼の正体3 ページ10

(羽生)「あ、てかこれプーじゃん！」

そう、お店で一目惚れして思わず同じものを二つ買ってしまったクッションの柄。
一見すると普通におしゃれで落ち着いた色味のそれは、よく見るとプーさんのイラストが入っている。

さき「そうなんです…！！わたしも小さい頃からプーさんが1番好きで、結構家にグッズあるんです！」

さすがにクッションもあの派手な色味にしてしまうのはどうかと思っていたから、この大人っぽい柄を見つけて1発で購入を決めたのだ。

(羽生)「わたしもってことは俺がプーさん好きなの知ってくれてるんですね？笑」

さき「え、当たり前です！
むしろ知らない人なんていないと思いますよ！笑」

彼の素晴らしい演技の後、氷に投げ込まれるプーのシャワーは誰もが一度は目にしているだろう。

(羽生)「え〜そんなことないと思うけど…ありがとう。笑」

少し照れたようにはにかむ顔を見て、胸がドキッと高鳴った。

その後も普段の私の仕事だったり、羽生選手が最近爆笑したという宇野選手の天然エピソードなどをお互い話してるうちに、ふとまた気がつく。

羽生選手めちゃくちゃ汗かいてる…。

気づけば快適な室温だったはずのエレベーター内は、真夏の暑さになっていた。

暑さに気がつくと途端に喉の渇きを感じる。
荷物を漁ってエレベーターに乗り込む前に買ったペットボトルを取り出す。

チラッと羽生選手を見ると、
これ絶対飲み物持ってないよね…？

小さなポーチを肩から斜めにかけているだけで、手には何も持っていない。

脱水とかになったら大変…！

さき「あの、これまだ開けてないやつなので！
良かったら飲んでください…！」

水のペットボトルを差し出すと、
驚いた顔して目を丸くする彼に続けて言う。

さき「実はお水ももう一つあります…笑」

外の暑さを想像して、帰るまでに足りなくなりそうだと思い追加で買っておいたお水が役に立った。

知らない人からもらうものなんて飲むの躊躇うだろうけど、開けてないからきっと大丈夫だろう。

(羽生)「え〜さきさん何でも持ってるね、すごい。笑
確かに暑くて死にそうだからいただこうかな。」

ありがとう！とまたキラキラした笑顔を見せ、水を受け取ってくれる。
ごくごくお水を飲む時の上下する喉仏をぼーっと見ていると、管理会社の人から無線が入った。