偶然からはじまる恋〜羽生結弦 (ページ47)

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凹む私ページ47

本社の人「ちょっと、これはどういうことですか？」

あなたが作った資料ですよね？って眉に皺を寄せて、少し荒げた声で私に問う。
いや問うというかこれは詰め寄る、が正しいかも。

その人が手に待つ資料を確認すると、確かに1年前、入社3ヶ月の私が作った伝票資料。
だけど指摘の箇所をよく見ると…え、待って何これ。

桁が明らかにおかしい。
１つではなく２つも0が多い。

サーっと血の気がひくのがわかった。

そこからの展開は早くて、すぐに上司が呼ばれて当時の事実確認。
入社したてだったからこの頃は先輩に付きっきりで指導してもらってたけど、確かこの伝票日付の数日間は体調不良で先輩がしばらく休んでいたんだった。

もちろん違う人に確認はしてもらってたけど、なあなあになったのは事実。
今見たらこんなの一目でおかしいことに気づけるのに。

1年も前のミスだから、今から修正するにはたくさんのことに影響が出るから、考えただけでも途方もない作業。

偉い人同士で少しの間対応を協議して、支店のメンバー全員でできる範囲の修正作業を今日のうちにやること。
私は休日返上で明日会社に行って、長々と始末書を書くことになった。

まだ入社したばかりで責任も取れないひよっこの起こしたミスなのに、なんて思うけど。
それだけの大きなミスだし、何よりお金に厳しい金融機関で働いているって自覚が足りなかったのを私に分からせるためだと、本当は分かってる。

それでも入社以来初めての大きなミスに反省と後悔、そして申し訳なさ、情けなさ、恥ずかしさ。
マイナスの感情に心を支配されて、今にも涙が溢れそうになりながらなんとか1日を乗り切った。

暗い静かな部屋に、不意にスマホが震える音と画面が明るくなって小さな光が見えた。

『今日も一日おつかれさま〜！
俺も今日はもう仕事全部終わって家に帰ってるところだよ。
やっと明日だね、楽しみにしてるよ。
６時頃さきちゃんの家に迎えに行くので時間大丈夫かな？』

…結弦くんだ。

この部屋で唯一の明かりに手を伸ばす。

私はLINEを交換して初めて、自分から通話マークをタップした。