偶然からはじまる恋〜羽生結弦 (ページ43)

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羽生サイド

取材の合間の休憩中、さきちゃんからのLINEにちょっと小さく笑う。

電話はむしろ俺からしたんだから、さきちゃんが気に病む必要は全くないのに。
謝らせちゃってかえって申し訳ない。

たけど社交辞令だとしても、こんな風に出会ったばかりの俺のことを心配してくれるのが素直にうれしい。

それに、なんとなく彼女は本気でそう思ってくれているような気がした。

実際俺は小さい頃から食事はあまり重要視していなくて、いや俺自身がしてないだけで、周りはありがたいことに色々気にしてくれてるんだけど。
昔からあまり量が食べられないから、俺はコスパが良い身体なんだとここ数年はむしろ開き直っている。

数日の食事でさほど身体は変わらないし(変わるほどの量を食べない)、何も食べないよりはコンビニでも何でもいいから食べろ、というのが周りの総意だ。

身体的にも練習でもこうした食生活の影響は幸いあまり見られなくて、俺的にも安心してコンビニ飯を多用してる訳だけど。

ちゃんとしたご飯か…。
いつかさきちゃんの手料理が食べてみたい、と昨日思ったことをまた思う。

これってちょっとずるいけど食事に困ってるって言ったら、作ってくれたり…するのかな。

さすがに図々しいかな。
いやでもこの話の流れって、もしろそう返すのが自然というか。

馴れ馴れしくして嫌われたくはないけど、会える距離にいるうちに仲良くなっておきたいのもある。

ちょっと探りつつ、いくか。

『うん、まあ…本当は作ったご飯がいいのはそうなんだけど…。
正直買い物も気を使うし、仕事もあるとどうにも自炊する気力がないんだよね。笑
さきちゃんは普段自炊するの？』

今日は昼から活動してたみたいだけど、何を食べたんだろう。
夜ご飯は何を食べるのかな。

なんかもうキモい位にさきちゃんのことを全部知りたい。
そして、同じだけ俺のことも知ってほしい。

すっかりさきちゃんに心を掴まれたまま、取材を再開するというスタッフの声で重い腰を上げた。