偶然からはじまる恋〜羽生結弦 (ページ30)

今日:2 hit、昨日:3 hit、合計:27,133 hit

タクシー5 ページ30

羽生サイド

さき「え、じゃあ…羽生さん？」

(羽生)「え〜名前で呼んでくれないの？」

俺自分で結構気に入ってるんだけど、結弦って名前。

さき「…なまえ！？」

(羽生)「なに、もしかしてフルネーム知らない？笑」

さき「まさか！」

力強く、もちろん知ってますよ！ってうなづくさきさん。
きっと本当に知ってくれてるんだろうけど。

(羽生)「嘘だ〜じゃあほら、言ってみて？」

さすがに分かりやすいけど、名前を言わせるように誘導してみる。

さき「……結弦さん。」

言わされてるのが分かっただろうけど、ここはちゃんと答えてくれる。
うーん、まあ彼女の性格からしていきなり呼び捨てはないと思ったけど、さん付けか〜。

高くも低くもない聞き取りやすいその声で、俺の名前が初めて呼ばれた。
なんだか心臓の辺りがムズムズする。

でも全然さきさんの方を向けないほど、近い距離にずっとドキドキしていた心は不思議とすーっと落ち着いていった。

さきさんはハキハキと元気よく喋る方ではないけど、その分感情を込めて、ゆっくり言葉を紡いで丁寧に話をする。

きっとそれが一緒にいて落ち着く、居心地がいい要因の一つだろうな、と思った。

(羽生)「…はーい。」

まずは呼ばれた返事をして。
だけど距離を縮めるなら、もうひと超えしたい。

(羽生)「俺はさきちゃんって呼んでもいい？」

さき「え、はい！お好きにどうぞ？」

(羽生)「うん。じゃあさきちゃんも結弦くんって呼んでね。」

？！って顔したさきちゃんに、俺はまた吹き出す。
でもこれは初めが肝心だから、多少強引に押す。

(羽生)「…いやなの？」

さき「いやじゃないですけど、でも…」

さすがに抵抗が…とさきちゃんからしたら当たり前だろう感情を告げられる。

(羽生)「そっか、俺の名前は君付けするの抵抗あるんだ。
じゃあ呼び捨てでいいよ。」

さきさんがさっきより？！って顔になる。
あ〜おもしれー！笑

さき「そんなのもっとムリですよ！」

想定通りの返答。

(羽生)「え〜呼び捨てしてくれないの？
いいじゃん呼んでくれたって。」

呼び捨てを前面にアピールしていくと、困ったように眉を下げたさきちゃんがついに言う。

さき「…もう。わかりました、結弦くんで勘弁してください。
でも敬語はさすがにムリですからね！」

…よし、勝った。
タメ口はおいおい外していってもらうとして、今日のところは上出来だ。