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タクシー1 ページ26

さき「えっ。」

聞き間違いかと思ったけど、すぐにそっぽを向いた羽生選手のその耳が真っ赤になっていて。
つられてわたしまで顔に熱が集まってくるのを感じた。


(羽生)「いや、その…ほら、なんかのキャラクターみたいでさ!」

なんて続けて羽生選手が言うけど、それが苦し紛れの照れ隠しだと分からないほど私は鈍感じゃない。

でもとりあえずそれに乗っかり、からかわないでくださいよ〜!なんて軽く羽生選手を睨むフリにするけど。

…なんだか2人の間にちょっと変な空気が流れる。


さき「っあ、」

何となく手持ち無沙汰で緑茶に手を伸ばすけど、もう飲み切っていた。

(羽生)「…飲んじゃったね、そしたら…そろそろ出よっか?」

気づけば時間はかなり経っていて、外は西日になっている。
かなり長居してしまったらしい。


さき「そうですね。…ここのジェラート本当においしかったです笑」

(羽生)「…うん、今度はまたちがう味も食べに来たいな。笑」

一瞬の気まずさは出たけど、それとなく当たり障りのない会話をして店を出る。


さき「えっと…じゃあ、わたしこっちなので…。
あの、今日は本当に色々ありがとうございましたっ!」

駅直結の出口方面への案内表示を見て、もうお別れだ、と羽生選手を振り返る。
優しい彼の顔を見て、ただの休日がとんでもない1日になったなと思った。

偶然エレベーターで出会ってから、たった数時間だけど。
たくさん話をして、思いがけず楽しい時間を過ごすことができた。

でも…もうきっとこの人と会うことはないんだろうな。
これからはテレビでちゃんと試合も見て、もっと応援しよう。


(羽生)「…あのさ、迷惑じゃなかったら一緒にタクシー乗って行こうよ。」

電車だと遠回りになるでしょ?って誘われる。

さき「え、いやでも…。」

彼の言葉にドキドキとまた勝手に胸が高鳴り始める。


(羽生)「その大荷物で電車乗るの大変じゃない?
場所だってとるだろうしさ…。」

そう言われて、確かに周りの乗客に迷惑をかけてしまうかも、と自分の荷物に目をやって思う。


でも…でも、これ以上彼と一緒にいると。
きっとわたしは叶わない恋をしてしまう。

後から思えば、そう考える時点でもう恋は始まっていたんだろうけど。
この時は何とか自分の気持ちに気づかないフリをしていた。

タクシー2→←彼氏2



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ベルギーチョコ(プロフ) - オリフラ立ってますよ〜 (2022年3月19日 13時) (レス) id: 1be44ced24 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:にのあい | 作成日時:2022年3月16日 20時

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